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2007年2月17日 (土)

「夏物語」歴史的汚点?

映画「夏物語」に対して、興味深いコメントを頂きました。レスで簡単にお答えできる内容でもありませんので、新たに書く事にしました。

>韓国という国は、歴史的汚点として この時代を振り返ること自体を避けているような気がするのですが。気のせいでしょうか?

>今回の「夏物語」も、歴史的汚点として あの時代のことは忘れ去ってしまいたいという国民感情に 敢えて挑戦する勇気がこの監督には無かった。そのように思えてなりません。

現状ではすでにこの時代、”歴史的汚点”という範疇には入らないと思います。「シルミド」や「大統領の理髪師」等、その時代での映画化は不可能だったでしょうから、時が経ち、文民政権が続き、”描ける時代になった”事は喜ばしく思います。「夏物語」に関しても、朴政権時代にはもちろん映画化は無理だったでしょう。朴政権時代は、”漢江の奇跡”と呼ばれた高度成長・復興の時代です。その政治手腕を評価され、後には独裁政権の歪を批判され、また再び再評価もされています。単純に”歴史的汚点の時代”とは評価できないと思います。

朝鮮戦争後韓国は、荒廃した国土・産業、そして東西冷戦の最前線に立たされた、苦難の中での復興を余儀なくされました。朝鮮半島の地下資源・工業力は北に集中していました。北は工業地帯、南は農業地帯、それが日帝時代の朝鮮半島です。南北分離で貧しくなったのは寧ろ韓国の方なのです。当時の国民総生産力は、北朝鮮の方が遥かに勝っていたはずです。

共産圏と(事実上の)国境を接し、米国の支援無しには成り立たない状況ですので「反共」は必須政策です。また政府の最低限の、そして一番大事な政策は「国民を食わす」事です。マルクスの予想では中産階級が育ち権利意識の確立した地に、最初の社会主義・共産主義国家が生まれるはずでした。英国のような地に。しかし実際に革命の起こったのはロシア・中国です。民衆に必要なのは「思想」より「食」だったのです。当時の韓国でも、「食えるなら共産国家でも良い」との思いが生まれないとも限りません。それを押さえ国民の意思を統一し、国民に貧困を甘受させるには、貧困の要因は政府であってはなりません。要因は他所に、つまり「日帝」にあらねばならなかったのです。そして「反共」「反日」が重要な二大政策になります。

一番反日意識の高いのは、実際に日帝時代を過ごした年代より、その時代を知らない次代、とはよく言われます。”反日政策”の成果です。客観的歴史認識よりも、善悪での評価、「日本人は悪、野蛮な民族」といった偏った歴史教育で、貧困への不満を日本に向け、日本の驚異的復興を「朝鮮人の犠牲の元に立つ繁栄」と批判、「日本に負けるな!」と扇動し国民を奮い立たせました。日本からの賠償金も、個人賠償では無く国家賠償として政府に吸収、復興費用として使いながら日本の名を伏せました。ですので一般韓国人は、”漢江の奇跡”に日本からの援助金・無利子融資金の使われた事を知りません。結果としてこの政策は成功し、苦難の時代を耐え復興を成し遂げました。その代わりに日韓関係に拭い切れない歪を残したのは皆さんご承知の通りです。

さて話を戻します。「夏物語」の時代が”歴史的汚点”だったのかどうか。この物語は、軍事独裁反共時代を過ごしたあるひとりの青年の物語です。つまりは”ある個人の体験”に過ぎないわけでもあります。これだけで、”政府の圧迫に怯える暗黒恐怖政治時代”と判断してしまうのは早計に思えます。時は高度成長期、最初の場面の主人公のような、”ノンポリお気楽青年”をも生み出す時代だったのです。上記理由から繁栄の裏には歪もあり、”汚点”部分もあった事は事実でしょう。しかしそれは成田闘争で無理やり土地を奪われた農民の居た日本と、ある部分では同様です。日帝時代の朝鮮でも、国を奪われた民族としてのアイデンティティ喪失感はあるにしても、反日活動家を除く大部分の民衆は普通の日常を送っていたはずですし、「夏物語」の時代でも、大部分の韓国人は同様だったはずです。決して”暗黒時代”では無かったはず。その表面的平穏の裏にあった悲劇、それを”汚点”と呼ぶ事もできるとは思いますし、それを描くのがこの作品本来の目的であったはず。それを描き切れなかったのは、単に監督の力量不足と感じています。少なくとも現状では、敢えて避けなくてはいけない、回避せざるを得なくなるような圧迫感の存在したようには思えません。

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コメント

諸葛亮様、こんばんは。

一気に読ませていただきました。
知識の豊富さ、冷静で公平なご意見、いたく感動しております。

>南北分離で貧しくなったのは寧ろ韓国の方なのです。

この辺のことは全く知りませんでした。とても勉強になりました。

>日本からの賠償金も、個人賠償では無く国家賠償として政府に吸収、復興費用として使いながら日本の名を伏せました。ですので一般韓国人は、”漢江の奇跡”に日本からの援助金・無利子融資金の使われた事を知りません。結果としてこの政策は成功し、苦難の時代を耐え復興を成し遂げました。その代わりに日韓関係に拭い切れない歪を残したのは皆さんご承知の通りです。

このことについては某TV番組で見ました。
この時、竹島(独島)のことについても話が及び、「『日本が国際裁判所へ双方からの資料を持ち寄って客観的に判断してもらおう』と韓国側へ提案しているのに韓国側が全く応じないのは、韓国が主張している『独島を最初に見つけた』という記述のある文献に載っている島と 現在の独島の位置が違っていたのを 都合の良いように改ざんしたことがばれて、自分たちが不利になるからだ」という話もありました。
この話の真偽のほどは分かりませんが、日本に関して歪められた話が事実であるかのように一般民衆に教育されてきたことが、残念でなりません。

せっかくお隣同士の国で、仲良くできる良いチャンスが到来したというのに問題は山のようにあり、なかなか事が上手く運ばない。歯がゆい思いです。

このコメントも色々と書き込んでしまいましたので、もし不都合がございましたら削除をお願いいたします。

勉強させていただきました。とても嬉しかったです。
本当にありがとうございました。 <(_ _)>

竹島(独島)に関しては「どっちもどっち」だと思っています。共に絶対の確証は持っていません。元々「国境」意識の無かった時代ですし、歴史資料も少ないです。文献での”位置”も、当時では「航海何日」とかですので、考えようで変わってきます。資源も無く人も住めず、利用価値の無かった島が「経済水域」権利の取り沙汰させるようになって問題化してきました。国境意識の無かった時代の線引きを、現在感覚で言い合いしているのですから、両者の合意する結論など出ようはずがありません。住民を追い出して占拠した北方領土問題とは、根底から異なると考えています。

諸葛亮様、こんにちは。

ご紹介の‘「反日韓国」に未来はない’を読みました。
この方は長いこと日本で生活されており、韓国にいたときに聞かされていた日本と実際に目にした日本とが余りに違っていた、ということを書いておられますよね。

ですが、問題は本国の韓国人の考え方です。
昔と違って今は「何が正しいのか」が国民に知らされるようになったと一般的には言われていますが、本当にそうでしょうか? 
或いはこの著者が仰っているように、「中国は兄だから悪いことをしても許し非難はしない。 日本は弟だから何かと非難の対象になる」のでしょうか?

数年前に、「韓国語と日本語」(大野敏明著、文春新書)を読みました。 この本で、両国の歴史や言葉の関連性など、様々な繋がりを知りました。
2国は隣国同士、深いところで関わり合っています。

彼らが真の日本の姿を認識し、日本人も過去の歴史をもう一度シッカリと見つめ直す。 そして未来に向かって良い関係を築いていって欲しいと心から思います。

>昔と違って今は「何が正しいのか」が国民に知らされるようになったと一般的には言われていますが、本当にそうでしょうか? 

「知る事のできるだけの情報が得易くなった」という事だと思います。政府・マスコミが積極的に知らせているわけではありません。この部分では日本も同様でしょう。韓国を知らない日本人も多いのですから。こと”歴史”に関しては、(その理解の仕方はさて置き)韓国人の方がずっとよく知っています。

>或いはこの著者が仰っているように、「中国は兄だから悪いことをしても許し非難はしない。 日本は弟だから何かと非難の対象になる」のでしょうか?

そういった点もあるかも知れませんが、あくまで”一面”だけかと思っています。政策として、不満を逸らす、追い付け追い越せと叱咤激励する、には、高度成長期の日本の方がずっと適していましたし、すでに文献上の”歴史”になってしまった中国関係より、記憶に新しい対日関係の方がずっと濃厚ですし。

>彼らが真の日本の姿を認識し、日本人も過去の歴史をもう一度シッカリと見つめ直す。 そして未来に向かって良い関係を築いていって欲しいと心から思います。

その通りですね。時間はまだまだかかると思いますが、少しずつでも、その方向に向け動いてはいると思っています。最近「日韓関係の悪化」と言われる部分もありますが、それ以前の無知・無関心の時代よりも表面化するようになっただけ、決して悪くなったわけでは無いと思っています。

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