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2007年2月25日 (日)

「ビューティフル・ネーム」

本は好きなのですが、普段はあまり費やす時間がありません。一番はかどるのは、移動中の電車の中です。土曜日に展示会のために上京(正確な目的地は千葉県内ですが・・・)、往復の車内、山手線などの短時間乗車でも本を取り出して読んでいました。途中夢中になってひと駅乗り過ごす失敗もありました。(笑)

往路車内で、読みかけだった鷺沢萌の「ビューティフルネーム」を読み終わりました。2004年4月突然この世を去ってしまった彼女の、遺作とも呼べる作品です。”名前”をテーマに書かれた作品、前の2作「眼鏡越しの空」と「故郷の春」は発表済みだったようですが、同じテーマの3作目「「ぴょんきち/チュン子」は未完、死後、PCの中から発見されたそうです。文章スタイルで迷ったのか、2種類の文面が残されています。同じくPCから発見された、「春の居場所(PCには題名は記されず、内容からの仮題だそうです。)」と共に、未完のまま掲載、4作品入りの文庫本としてこの1月に発刊されたばかりの本です。

総題の通り、3作品は名前にまつわる物語ですが、韓国系の祖母を持つ彼女ですので、「通名」と「本名」との間で揺れる、在日韓国人2世3世での”思い”がテーマとして描かれています。私などが漠然と型通りに考える”差別”とはまた異なります。「名前とは?国籍とは?」との問いかけには、答える術を知りません。日本に生まれ日本で育ち、日本人と変わらぬ”通名”で育った人、韓国名で育った人、また作者のように、韓国の血の流れている事を知らずに育った人、同じようであり同じで無く、それぞれの意識と反発と悩みとの中で生活してきた人々。そう、”生活”と”個性”、当然”差別””国家アイデンティティ”の問題は出てきますが、それよりも、2つの名前と国を持つ事を”個性”としてどう消化生活してきたか、そんな物語であるように捉えました。大向こうを張った主義主張では無く、概略一元化できる話でも無い。重い問題でもあり、彼女彼らにとってはごく普通の日常でもあった。ナンカよく表現できませんが、”差別”と単純に捉えてしまう私達とは、また異なるニュアンスで書かれている事だけは感じる作品でした。

鷺沢萌という作家、初めて読んだのは「ケナリも花、サクラも花」だったと思います。何となく惹かれる思いを抱いた作品でした。「君はこの国を好きか」も「葉桜の日」も良い作品でした。一般的には「大統領のクリスマスツリー」で有名になった作家なのでしょうが、これは読んでいません。突然の死には驚きましたし、失って惜しい作家だったと、読んで今回もそう思いました。

ビューティフル・ネーム Book ビューティフル・ネーム

著者:鷺沢 萠
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Book 葉桜の日

著者:鷺沢 萠
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