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2007年6月 4日 (月)

「女帝」

チャン・ツィー映画は、一応観に行く事にしています。五代十国時代での設定ですが、「歴史物」「戦記物」とは考えない方が良さそうです。歴史物としての客観的史観も、戦記物の躍動感もありません。

ワイヤーアクションは見飽きましたが、「HERO」「LOVERS」よりはマシかと思います。2作ほどしつこくくどくはありません。いずれにしても、特撮アクションはあくまで脇役、本筋の方にもっと重点を置いて貰いたいものです。

その"本筋”ですが、こちらにも疑問点はあります。話の流れがやや悪く、ギクシャク感があります。原作が戯曲ですので、あるいは、それを意識しての演出なのでしょうか?原作は、あまりに有名なシェークスピア4大悲劇のひとつ「ハムレット」、学生時代に2度読みました。

原作では、王妃ガートルードもオフィーリアも、ポローニアスもホレーショーも、皆クローディアス(王)の陰謀、前王殺害の真相を知りません。ひとりハムレットが孤独に悩みます。しかし「女帝」では、逆に皆真相を知り、または推察しています。謀略策謀に主眼が向けられ、”悲劇”としての醍醐味は薄れています。無知・無垢故にハムレットを悩ませた王妃を、内心で復讐を誓う強い女に置き換えた事で、ハムレットたるウールアンの存在を霞ませ、”女帝”そのものにハムレットを演じさせようともしています。やはり陰謀とは無関係に、ひとりの”恋する乙女”として悩み気のふれてしまったオフィーリアを、舞台正面に登場させ、道化役として無駄死にするポローニアス役のイン宰相にも策謀に参加させる。果ては悪役リー王(クローディアス)にも、名誉ある死を与えてしまいました。最後の、女帝の蛇足的な死に象徴される如く、いずれもが形式的で実感の無い、”生きた人間”を感じさせない「作られた役柄」と見えます。これも”戯曲”を意識した演出なのか!?だとするならば、やはり成功したとは思えません。

前半は、歌舞伎的な?、約束事の世界での演出として、それなりの見所はありました。しかし粗筋の見えた後半では、話の展開はまどろっこしく感じました。有名作を下敷きにした場合、観客に先を読まれてしまう事は当然予測して、通常以上に手早い展開を与えないと、厭きさせてしまいます。また”悲劇”の分散は、それぞれを薄味に仕上げ、結局誰にも感情移入できない結果をももたらします。単純評価でも、「HERO」「LOVERS」よりはマシ、「始皇帝暗殺」には遠く及ばない、といった感じです。

主演はご存知チャン・ツィー、リー王役に、コン・リーとの共演作「活きる」でカンヌ映画祭最優秀男優賞受賞のグォ・ヨウ、オフィーリア相当のチンニーには「中国の小さなお針子」で印象深いジョウ・シュン、という配役は豪華なのですがねぇ・・・。そういえば、ホレイショー役が居なかったな。

Music 映画「女帝[エンペラー]」オリジナル・サウンドトラック

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