韓国オフ会で東京に泊まって翌日には、映画「サイボーグでも大丈夫」を観てきました。事前に耳にした評判には良いものがありませんでした。こんな時「じゃ観るの止めとこう。」と思わないのが私のひねくれたところ(笑)、本当に面白くないのか確かめたい気持ちが湧いてきます。監督がパク・チャヌクですので、単純に駄作とは思えません。元々私、世間評価とは異なる感じ方してしまう事も多いですし、評判は信じ過ぎないようにしています。
で、観た感想ですが、評判の悪い事は理解できます。しかし駄作とは思えません。「秀作!」と感心できるまでは行きませんが、相当に深い、監督の思い入れを感じる作品でした。当初から興行成績は期待していない作品なのでしょうね。実績のある監督にしか許されない、ある意味監督の”我が侭”とも言えるくらい、個人的な世界なのでしょう。
私にはテーマを、明確に表現する事はできません。ただおそらく、価値観の異なる世界間の”ちぐはぐさ”みたいなものを描きたかったようには感じました。健常人から見れば、狂人はただ「狂っている」だけ、しかしその狂人の頭の中には、別軌道の思考があり常識がある。主人公ヨングンと精神クリニック職員との思考は、常に噛み合いません。
今読んでいる小説、陳瞬臣の「中国美人伝」なのですが、その中の「王昭君」、従来は「辺境の匈奴に嫁いだ悲劇の美人」という捉え方が一般でした。しかし作者は、”幸せな結婚”として描いています。匈奴を”辺境の未開の民”としてのみ捉える、その間違いを書きたかったのでしょう。最後に「たがいに理解がとどくようになれば、万民が幸せになれるのだ。なにやら現在もおなじことがおこっているようではないか。」と〆られています。パク・チャヌクがそこまで求めたかどうかは判りません。しかし同じ方向を向いての作品ではあるように思います。
ヨングンを理解し救おうとするイルスンは、患者の中で唯一”狂っていない”存在、しかし狂気の中にある常軌を読む事のできる、謂わば狂気の通訳者です。狂気を狂気と打ち捨てず、狂人の心で理解しようとします。彼の発する「サイボーグでも大丈夫」という言葉、その「クェンチャナヨ」が心に残ります。友愛に満ちた、すべてを受け止める言葉に感じました。人類皆がイルスンの気持ちを持つ事ができれば、民族間の諍いも無くなるのかも知れません。
主演のイム・スジョンの好演が目立ちます。「角砂糖」を見逃してしまった事が残念です。歌手として活躍するピ(チョン・ジフン)もしっかり役作りしていました。娯楽作ではありませんので、面白くは無いかも知れません。相当に好き嫌いはあるでしょう。しかし観ずに打ち捨てるには勿体無い作品と感じました。http://eiga.com/official/cyborg/
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