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2014年12月16日 (火)

最近読んだ本

「関ヶ原」 司馬遼太郎著 新潮文庫全3巻  NHK大河を切っ掛けに読み返した「播磨灘物語」、その流れでこちらも再読です。本を買ったのが平成元年ですので、20数年振りの再読になります。読み返してみると、記憶の中の物語と多少異なる部分もあります。どうやら、1981年のTBS製作のドラマと混同してしまっていた部分もあったようです。ドラマでは主人公を持ち上げて描きますので、加藤剛演じる三成は堂々とした”不運の武将”でしたが、(ドラマ原作でもある)司馬遼太郎の小説ではその欠点も描かれています。義を重んじ明察な頭脳を持つ三成、その反面頑なで融通の利かない論理主義者。しかし決して冷酷な人柄ではなく、配下にも領民にも心を使う。物事を論理的に判断するが故に非論理的行動や過ちを嫌う潔癖さ。世俗的物欲から遠い自己抑制型の人間。同じ作者の描いた「播磨灘物語」の官兵衛からすると、多少人間味の部分での面白みには欠けますが、時代を駆け抜け、また翻弄されながらも真正面から挑んだ、溌剌とした人物像が描かれています。NHK大河では敵役として、嫌味な人物としてだけ描かれているのは残念です。

「イザベラ・バードの日本紀行」 イザベラ・バード著 講談社学術文庫全2巻  明治の初めに日本を訪れた、イギリス人女性旅行作家の書です。東京から東北・北海道まで、主街道から外れた、日本人でもあまり経験しない奥地の道を苦労して走破しています。この時代にこのようなルートで外国人女性がひとりで(日本人通訳を1人連れただけで)旅していたとは、とても想像できません。その行動力・好奇心・探究心にはただただ恐れ入るばかりです。そのお蔭で当時の日本・日本人の様子を知る事ができました。日本人の礼儀正しさ、ぼられるという事が無い、外国人女性がひとりで旅しても危険を感じさせない、等々、読んで嬉しくなる表記も多いのですが、顔かたち(醜い)体型(貧相)と手厳しい表現もあります。女史特有の率直な物言いとユーモアでもありますが。特に山間部での旅では、ほとんど裸に近い村民、不衛生な環境、汚れて皮膚病の子供たち、蚤の大群に悩まされての宿泊等、文明開化で賑わう都会とは隔絶した貧しい山村もリアルに描かれます。しかし勤勉な農民の貧しさ、として民衆に寄り添い改革を望む同情を込めた優しさが感じられます。日本近代化の礎として、貴重な旅行記を残して頂いた事に日本人として感謝しています。日本人の知らない日本がありました。特に故郷に近い日光の景観を褒めて頂いた事は嬉しかったです。

「朝鮮紀行」 イザベラ・バード著 講談社学術文庫  「日本紀行」を読み終わり、自然な流れでこちらも読み返したくなりました。数年前に1度読んだ本です。先の日本旅行から10数年後に訪れた朝鮮及び中国(清・満州)での旅行記です。ほとほと困難な旅の好きなお方です。やはり外国人未踏の地へ踏み出し、信じ難いほどの困難な旅にチャレンジしています。時代が流れ、「日本紀行」ではスケッチだったものがこちらでは写真も登場します。文章も読み易く感じます。訳者は同じですので、やはり年の功なのでしょうか。また、日本にとっても激動の時代でした。それが現場を知る第三者の目で描かれている事は興味深いです。「私は日本が徹頭徹尾誠意をもって奮闘したと信じる。経験が未熟で、往々にして荒っぽく、臨機応変の才にかけたため買わなくてもいい反感を買ってしまったとはいえ、日本には朝鮮を隷属させる意図はさらさらなく、朝鮮の保護者としての、自立の保証人としての役割を果たそうとしたのだと信じる」 文中に置いて日本批判の文章もあります。全くの日本贔屓ではありません。ただこの段階では、まだ日本は理性的だったのでしょう。この後女史の信頼を裏切ってしまった事は残念です。 またこの本、文中の1部だけを抜粋して嫌韓輩の朝鮮誹謗の道具として使われる事がしばしばですが、実際は異なります。現実を包み隠さず描く女史です。朝鮮の腐敗や貧しさも描かれますが、長所もちゃんと描かれています。

「蒙古の槍」 白石一郎著 文春文庫  買ったきり本棚に忘れていた本です。やはり官兵衛繋がりで、同時代の物語として読み始めました。「島」をテーマにした短編が7編載せられています。表題の「蒙古の槍」は時代が遡り元寇を題材としています。歴史の主役にはなり得ない、小島の老人の物語です。ちょっと泣ける、心に何か重たい石を埋め込まれたような読後感の残る物語です。最初の作品のパンチが重かったので後が少々読み進み辛かったのですが、他作品も面白いです。「巨船」は水軍として活躍した九鬼嘉隆の物語、「関ヶ原」と時代が一致して、司馬作品にも登場する武将ですが、描き方が異なります。短編とはいえ主役となると、人物像に人間味が深くなります。「関ヶ原」では脇役、説明的になりますので。

「コンスタンティノープルの陥落」 塩野七生著 新潮文庫  「レパントの海戦」が面白かったので、順番が後先になってしまいましたが、探してきました。最初訪れた時在庫がなく、代わりに「ローマ人の物語」を買って読み始めてしまいました。文庫で全43冊、大変なものを読み始めてしまいました。しかもこちらの3部作とは内容も異なります。「ローマ人~」の方はかなり”歴史書”に近い書き方になっています。ま、それはそれで面白いのですが。 で「コンスタン~」ですが、1453年のビザンチン帝国首都のコンスタンティノープルの陥落を中心に、戦端までの数年を描いた作品です。「レパント~」ではヴェネツィアの海将バルバリーゴを中心に描いていますが、こちらではヴェネツィアの軍医やフィレンツェの商人、枢機卿、セルビアの指揮官等、数人の立場・目線で描いています。スルタン・マホメッド2世の小姓も歴史の証人として描かれます。いずれも生き残り、後世に現場の模様を伝えた人達なのです。そのそれぞれの記録を基に作者がまとめあげた歴史小説です。書き出しの文章が印象的でした「一都市の陥落が一国家の滅亡につながる例は・・・・・・・コンスタンティノープルは、滅亡の日が明らかであるだけでなく、誕生の日もはっきりしていることでも、珍しい都なのであった」 コンスタンティノープルの陥落は、一文明の終焉に繋がる出来事だったそうです。

「終業式」 姫野カオルコ著 角川文庫  ここ暫く歴史物に偏りがちでしたの、気分転換に別のものを挟みました。今年初めに「昭和の犬」で直木賞を受賞、その時初めて青山学院の卒業生と知りました。私の4期後輩です。読んだ作品「終業式」は、高校時代に始まり、大学・社会人・結婚と続く数人の若者の20年ばかりを、手紙やFAXのみで描いた作品です。時代が被りますので、懐かしい思いも蘇ります。携帯電話の無い時代を共有していますので、「手紙」という現代では古風にも感じられる伝達手段にも違和感はありません。巻末の藤田香織氏の解説に「地の文が一行もなく」と書かれています。確かに作者による説明が全くなく、すべてが謂わば「会話文」です。読み続けて気付いた面白い部分は、書かれたすべてが「本当の事」とは限らない事です。「手紙」をそのまま載せた構成ですので、内容は書き主の都合も含まれています。つまり「嘘」も頻繁に登場するわけです。同じ登場人物が別の人宛に書いた手紙も登場しますので、後々にその「嘘」が読者にも知らされるわけです。また、未投函の手紙も文中では公開されます。そして出さずに廃棄した手紙に限って、真意が書かれているという逆説が存在します。確かに現実にはその通りですね。男女の想いの擦れ違い行き違い、自身の青春を顧みて「ああ、もしかしてこんなこともあったかも知れない」と振り返る読者は大いと思います。リアルでセツナイ物語がそこにありました。

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