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2015年3月 5日 (木)

最近読んだ本

「李陵・山月記」 中島 敦著 新潮文庫  北方謙三の「史記 武帝記」、作者の著作時に頭にあった作品とのことで、読み返してみたくなりました。本棚を探したのですがその時は見つからず、結局また買ってきてしまいました。文庫初版が昭和44年、”82刷”になっています。長く読み継がれている本です。山月記・名人伝・弟子・李陵の4作品が収められています。一番印象に残っていたのは「山月記」ですね。「李陵」は予想外に憶えていませんでした。特に、蘇武に関しても書かれていた事、すっかり忘れていました。主人公の一人として描かれている北方作品と異なり、「李陵」では主人公の内面を描くための題材として使われているせいかも知れません。4作品全206ページの内、”注解”に51ページを投じています。明治期に生まれ、漢学者の家系(祖父が漢学者、父親は漢文教師)に生まれた作者ですので、注解なしには判らない言葉も多く登場します。暫くこういった作品から離れていましたので最初は読み辛く感じました。これからの若者には読まれない作品かも知れません。漢文を和訳したような重々しさのある作品ですが、北方・司馬作品にあるような、歴史”小説”としての躍動感はありません。反面純文作品的な趣は感じます。

「さくら」 西加奈子著 小学館文庫  TV対談番組で、椎名林檎嬢たっての希望で実現したとの対談のお相手が作家・西加奈子氏でした。それまでは名前も知らなかった作家さんです。林檎ファンとしてはとても興味深かった対談でしたので、西加奈子氏の作品も読んでみようと思いました。本屋で題名だけで選んだのが「さくら」でした。初期の作品だったようですね。作品は、ある一家の概して幸福な日常から始まります。文体は全く違うと思うのですが、何処かに、昔夢中になった庄司薫の匂いを感じました。 幸福で平凡な日常を描きながら、時折先行きの不幸を予言するような文言を差し入れます。そしてある日突然に、逃れようのない圧倒的な不幸が訪れます。そして読む側を不安に陥れます。読み続ける事が怖くなりますが、そのくせ先を知りたい焦りも醸し出します。どう考えても幸福な結末は考えられない、作為的な奇跡は作品を嘘臭くするだけですし。そしてその奇跡は訪れたのかどうか?奇跡なのかも知れませんし、何もなかったのかも知れません。ただ不思議と安心はさせて貰えたのかも知れません。解決しようもない問題を丸く解決せずに終えた作品ですが、それだけに嘘は書かれていないように感じました。   西加奈子原作の映画化「きいろいゾウ」も観てきました。何かしらの魅力はあるようですが、何かよく判らない作品でした。原作を読めば判るのか?と文庫本を買ってきましたがまだ読んでいません。

「ロードス島攻防記」 塩野七生著 新潮文庫   「コンスタンティノープルの陥落」に続く三部作の2作目です。「レパントの海戦」は最初に読んでいますので、これで完結になります。 オスマントルコの攻略を受ける直前にロードス島騎士団に配属された若き騎士、アントニオ・デル・カレットの戦いを描いた作品ですが、騎士団の歴史に遡り、攻防戦の始まるまでの経緯にも多くのページが割かれています。それが塩野作品の魅力でもあると思うのですが、時代の成り立ち・流れを丁寧に分析し描き、その中で生きる個人として登場人物を生きさせます。時代に流されるわけではないのですが、時代から離れて生きる事もできない、個人の生きる力を否定する事なく、しかし大きな時代の流れの渦に巻き込まれる人の無力さも描く、そんな難事を気負わず描き続ける作者です。 イスラム世界とキリスト教世界との対立の時代、その時代を区切る大きな節目が三部作として描かれているわけですが、近頃のIS(イスラム国)での騒ぎと比べると、以前読んだ「イスタンブールー世界の都市物語(陳瞬臣)」も含め、イスラム側の寛容さを随所に感じます。イスラム教の原点とISとはやはり全くの別物なのだと、改めて認識しました。

同じ作者の大作「ローマ人の物語」も読み続けています。文庫本で現在7巻まで進みました。全43巻ですので、先は果てしなく遠いです・・・。その中で印象に残る文面がありました。「理(ことわり)を理解する人が常にマイノリティである人間社会~」 民主主義は多数決ですが、多数が常に正しいとは限りません。ヒトラーもムッソリーニも民主制による選挙で選ばれました。日本の軍政も、東条英機が独裁者として作り出したわけではありません。発端は無知な民衆のヒステリックな”偏愛国”とそれを煽ったマスコミだったと考えています。決して済んでしまった過去の話とばかりは言えない気がします。

「尼子経久」 中村整史朗著 PHP文庫   本棚に眠っていた本です。戦国初期に中国地方に覇を唱え、最後は毛利に滅ぼされた尼子家の剛勇・経久を描いた作品です。一応まともな歴史小説ではありますが、司馬作品のような重厚な歴史物語でも、先ごろ亡くなられた火坂作品のような、多少史実から離れても小説として盛り上がる展開でもない、箇条書きの史実に肉付けしただけのような部分も感じられる小説です。経久の人物像も、パターン化された戦国武将としてしか受け取れません。ふと出版年を確認したところ、1997年でした。はは~んなるほどです。1997年はNHK大河で「毛利元就」の放送された年です。大河ドラマが作られると例年、人気便乗でそれに関係した書籍が出版されます。これもそのひとつなのでしょう。大河の参考資料としてはよいかも知れませんが、独立した歴史小説としては、いささか魅力に欠けます。

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