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2019年2月10日 (日)

最近読んだ本

前回間隔が空き過ぎてしまったので今度は2ヶ月で。

「ふらんす物語」 永井荷風 新潮文庫

何が切欠だったのか憶えていないのですが、急に海外エッセイ的なものを読みたくなりました。思い付いたのが漱石の「倫敦塔」、あんな作品なかったかなぁ?と記憶を辿って出てきた書名が「ふらんす物語」でした。漱石よりちょっとだけ後ですが、ほとんど同時代の欧州を描いた作品です。永井作品は初ですが、漱石的作品を思い描いていたのでその点では大きく期待外れです。「倫敦塔」には海外での孤独感や閉塞感が表現されていたように思います。「ふらんす物語」でも同様の表現もあるのですが、質・志向が全く異なります。何か、自分の環境に、エトランジェ的孤独感に”酔っている”ようで、漱石のような切実さがあまり感じられません。文章表現も華美過剰でリアル感に乏しい。永井荷風の表現がその時代のもので、漱石が斬新だったのでしょうか?当時はかなり持て囃された作品だったようですので。因みに、永井作品を探して本屋に行きましたが見つからずネットで買いました。私の高校生時代ではよく聞く作家名でしたがもう流行らないようです。それも納得。当初は「続いて『あめりか物語』も、」とか思っていたのですが立ち消えです。

「浮世の画家」 カズオ・イシグロ ハヤカワ文庫

ノーベル文学賞受賞作家、流行に乗って買ってきました。それまで聞いたこともない作家名ですので作品に対する前知識・イメージが皆無です。「浮世の画家」を選んだのは、原田マハマイブームに絡んでの画家主人公との点だったかも知れません。もちろん翻訳本ですのでその通りなのですが、そのまま”翻訳本”でした。翻訳者はもちろん日本人ですし、作者も民族的には日本なのですが、あまりその雰囲気は感じません。時代の中で国威高揚作品を描き、戦後の価値観変遷で逆風に晒される。そういった主人公を冷静客観的に描いています。その分切実感はやや希薄かも?逆風の中母国を去った藤田嗣治の「藤田嗣治展」を見てきたタイミングで読み始めたせいかも知れません。この人の作品、もう1冊位読んでみないと掴み切れない気がします。

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「モダン」 原田マハ 文春文庫

惹き付けられた「ジヴェルニーの食卓」は印象派画家達がテーマでしたが、今度は現代美術、しかも作家ではなくMoMA(ニューヨーク近代美術館)に係わる人々に焦点を当てた作品です。文庫本には5編の短編が収容されています。5編中4編での主人公がディレクターやキュレイター、デザイナーという展覧会に係わるスタッフですが、同じスタッフでも「ロックフェラー・ギャラリーの幽霊」では警備員が主人公になっています。この警備員スコットが中々印象に残ります。世界的大家の作品に囲まれながらも美術的知識・素養は持たない、という設定も面白い。ただその結末の「解釈はいかようにも」と投げ出された部分は少々落ち着かない。またこの5編、すべてMoMAがテーマにはなっているものの、視点はすべて異なっています。東日本大震災での福島原発事故を扱った「中断された展覧会の記憶」には涙腺を刺激されました。「新しい出口」では9・11NYテロが重大な転機となっています。原田マハ作品、まだ小説は2冊目(9編)ですが、登場人物がすべて”いい人”です。安心して読んでいけるし読後感も心地良い。「こんなに甘やかされて良いのか?」との不安もないではないのですが、決して理不尽に、ごますりや忖度で甘やかしているわけでもなく、理性的な目線で描かれていると思います。陽の当たる居間のような、こんな心地良い場所も必要とされているのだと思っています。   「キネマの神様」が順番待ちしているのに、ついつい「太陽の棘」も買ってきてしまいました。当分原田マハマイブームは続きそうです。しかし本屋に行くとある意味絶望的な気分になりますね。あの大量の書籍、生存中に読み切るのは勿論不可能。だけでなく、既読本も「良かった」「難しかった」という漠然としたイメージはあるものの、あらすじは一向に思い出せない。崩れる砂山を築いているような虚しさも感じます。まそれは、考えないことにしましょう。1冊1冊、読んだだけの充実感は得ているのですから。

このあと3冊は前回同様亡くなった父の本棚から。生前の父は、青春は戦時期でしたし読書家ではなく、本を読むようになったのは亡くなる前数年の間だけです。多くは戦争体験の類と時代小説です。

「総会屋錦城」 城山三郎 辛勝文庫

「指揮官たちの特攻」で縁のあった作家ですので、その繋がりで買ってきて読んだのでしょう。表題作は直木賞受賞作です。7編の短編が収められていますが、受賞作が特に面白いというわけでもなく、寧ろ面白みに欠けます。他が受賞後の作品ですので、受賞2作目が難しいと言われる受賞後を難なく乗り越えた結果、ということなのかも知れません。順調に作家として伸びたと。私的には「メインド・イン・ジャパン」と「プロペラ機・着陸待て」が面白かったです。子供として下から見上げていた高度成長期、その背景を知る思いです。

「十七歳の硫黄島」 秋草鶴次 文春新書

5%弱という硫黄島戦日本兵の生還率、その一人の記した記録です。筆者は父と同い年、同じ市内在住の方ですので、生前何か交流があったのかも知れません。2006年に出版されています。悲惨な戦いが生々しく描かれています。現場での体験者しか知り得ない状況描写もありますが、寧ろ内部では、またいち少年兵では知り得ない全体状況もあります。通信兵という、歩兵一兵卒とはまた別な立場にあったとはいえ、戦後資料や取材で知った戦況と照らし合わせて書かれた部分もあるのだと思います。文章としては稚拙な部分もありますが、それが寧ろリアル感を際立たせます。語り伝えるべき歴史資料として価値あるものだと思います。

「人間の運命」 五木寛之 東京書籍

単行本初版です。いつだか菩提寺で五木氏を講師とした講演会が開かれたことがありました。寺の世話役を仰せつかっていましたので、その縁で購入したのでしょう。親鸞の「歎異抄」を主な題材として書かれています。宿業と生きる意味死の姿、罪と罰、答えの出ない命題に真摯に取り組む姿勢を感じます。少年時に朝鮮からの過酷な引き揚げを体験したことを初めて知りました。その体験から性善説に馴染めない人間自体への懐疑と、運命というものへの捉え方、読者に説くのではなく”共に悩む”姿勢で書かれていることに、著者の誠意を見ることができます。読んでも答えは見出せません。それでも未来への”窓”ともいうべき一筋の光は、与えてくれる本でもあるように思いました。五木氏ほどの人間でも同じく悩み患うことに安堵しているのかも知れません。

「モダン」感想文中にも書きましたが、日々出版される本の多さに、読み切れない虚しさに囚われることがあります。至宝の1作があるかも知れないのに遭遇しないかも知れない恐れとか、愚にも付かない悩みです。読むのが遅くて消化できないのに、本屋に行くとついつい買ってきてしまって、読み待ち本は増える一方です。平行購読本は現在6冊、読み切れないのに原田本は更に読み始めてしまいそう。パステル画は取り敢えず描き終えたものの制作中の油彩は3点、森高ライブは全国ツアーの内2会場購入済み、先行予約前会場でも少なくともあと3会場は参戦予定。サンウルブス戦も1枚購入済み。W杯ラグビーは2会場確保。スキーも行くしライオンズも行くだろう。そして秋には東京でグループ展。う~~ん、自分で振り返ってみても予定組み過ぎスケジュール過剰だぁ!人生は短し欲は深し・・・。

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