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『乳と卵(ちちとらん)』川上未映子 文春文庫 2010年(2022年19刷 2008年文藝春秋)
初めて読む作者、帯の「一夜にして、現代日本文学の風景を変えた芥川賞受賞作」との文言に目を惹かれました。芥川賞受賞作というのは、できれば読みたいという気持ちはあるのですが、実際にはあまり読んでいません。単行本は買わない、大部分は文庫本で読んでいます。それで「文庫化されたら読もう」と思いつつ、文庫化された頃には忘れていて読み損ないます。そのせいで余計目に付いた帯文言でした。
確かに「新しい」「今風」といった雰囲気は感じました。2008年作で15年も以前の作品ではありますが、70歳にもなると15年前などは「つい最近」にも感じますので。😅 ただ「一夜にして~変えた」というのは少々オーバーにも思います。
言葉を交わさない、筆談で応答する母子、奇妙な関係です。ただ読み進むと、そこまでの深刻な要因の在るわけでないことが判ります。私の時代と同じ、ではありませんが、極端な違いはない親子関係、親子での情愛は残っているようで安心した部分はありました。若い時代に親に反発するのは世代を超えた常道でしょう。ただ外見として現れる姿は変わる。私の世代では、言葉は少なくなっても「筆談で」という状況は想像できません。到底許される範囲ではありません。相当に険悪です。それもあり、序盤で深刻な要因を想定してしまったのは世代格差なのかも知れません。
新しい時代の作家との雰囲気は感じました。ただこの作品でのインパクトは強烈ではありません。軽いジャブ程度です。ただ「もう1作」と思わせる期待感はあります。帯にも紹介されている「夏物語」でも読んでみましょうか?
『朝鮮半島史』姜 在彦 角川ソフィア文庫 2021年(2006年朝日選書)
朝鮮半島の歴史をその神話時代から東学農民戦争まで、つまりは韓国併合までを書いています。随分以前に、韓国に嵌った時期に三国時代を中心に歴史を読んだことがあります。大雑把には知っているつもりでしたが、姜在彦版は更に詳しく述べています。もう新しい知識は定着しません。暗記する必要もありませんので、読み飛ばす程度での読書でした。
朝鮮半島は、常に隣接する大国、隋や明・元・清などの中華王朝に翻弄されてきました。そして最後には大日本帝国に。生き残るためには情勢を見極め「長いものに巻かれる」処世術が必要でした。そしてまた、党派党略での陰湿な権力闘争も目立ちます。日本的感覚では「陰湿」ではありますが、戦をして大勢が死に巻き込まれた一般民衆が苦難するのと、権力中枢トップの数人が毒殺されるのと、どっちが良いと問われると悩みます。ただ朝鮮王朝末期での密室政治が近代化を遅らせた要因であったことは確かかも知れません。
『下野国が生んだ 足利氏』下野新聞社編集局著 下野新聞社 2017年(2021年第4刷)
栃木県の地元紙「下野新聞」土曜版に連載されていたものを編集して出版した本です。下野新聞は取っていないので新聞記事は知りませんでした。判り易くはありますが、足利市生まれ在住で地元歴史にも興味を持つ私には、目新しい事実はあまりありません。京都「時代まつり」での室町幕府参加が2007年からで、それまでは認められなかった、ことが新しい知識になった程度。帯にある「足利氏通」になるには少々役不足。ごく初歩の入門編といった程度の本です。
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