2023年9月15日 (金)

最近読んだ本『堀辰雄~』『絵画を~』『風神雷神』

『堀辰雄 ちくま日本文学』堀辰雄 筑摩書房 2009年(2022年第4刷)20230815_084808

 

 

「ちくま日本文学」文庫版全40巻の内の1冊です。堀辰雄作品は『聖家族』『美しい村』『菜穂子』他、主要作はほとんど読んでいました。50年以上も前の高校生時代のことです。映画『風立ちぬ』を機会に数冊をその時に読み返しています。ゴルフで訪れた軽井沢、通りがかりに入ったブックカフェで目に付いた本です。街中の本屋だったら買わなかったでしょう。軽井沢で堀辰雄、というのが運命めいて思わず買ってしまいました。『風立ちぬ』以外は未読の作品だったこともあります。

デビュー作『ルウベンスの戯画』から数作は、若さ故の気負いのようなものが感じられます。ただ最初に載っている『鳥料理』は『聖家族』よりも後に書かれているし、必ずしも初期作品の特徴と言うわけでも無さそう。テーマにもよるのでしょう。やはり軽井沢情景の作品が落ち着きます。乙女チックな物語として男性ファンは少ないのかも知れませんが、何故か惹かれる部分の多い作家です。嘗ての軽井沢に対する郷愁もあるのかも知れません。軽井沢もすっかり変わってしまいましたから。『風立ちぬ』はこれで、3度目か4度目の購読になります。

 

 

 

『絵画を読む イコノロジー入門』若桑みどり ちくま学芸文庫 2022年(1993年NHK出版)20230829_103542

 

 

リタイアシニアなのですが通信系で美大生やっています。現在は洋画コースなのですが、最初の2年間は芸術学コースに所属していました。学術研究はどうも身に合わず専攻変更しました。しかしこの2年間が無駄だったとは思いません。「研究」するまでの興味はないのですが、知識として持つことは有益だと思っています。芸術学授業の最初に「感性で絵画を理解することはできません」とはっきり言われました。感性は勿論大切です。しかしそれだけではあまりに大雑把になりがちに思います。「最終的には好き嫌い」というのも間違いだと思っています。「好き嫌い」は当然あります。それを超えて理解しようとする努力無くしては、それこそ時間潰しの趣味で終わってしまいます。理解することで、好き嫌いを超えてある種の感慨に至ることもあると思います。

 「イコノロジー」は「図像解釈学」と訳されています。時代が新しくなるほどに、感性比率が高くなりイコノロジー比率が低くなります。新古典派以前、特に中世期の作品ではイコノロジー無しでは到底理解はできません。本書は、古典12作品に関して図像解釈したイコノロジー入門書です。多少の事前知識を持つ方には判り易い文章だと思います。

 コンテンポラリーアート(現代美術)ではまた別の意味で、感性だけでは理解できかねる作品も増えています。コンセプチュアルアートのように。それはまた別の話しです。

 

 

 

27冊目の原田マハ『風神雷神(上)(下)』PHP文芸文庫 2022年(2019年PHP研究所)20230914_193714

 

 

まさにぶっ飛んだ発想です。『暗幕のゲルニカ』でも「ここまで飛躍しちゃって大丈夫?」と心配しましたが、『風神~』では心配するのもあほくさい程の破綻です。もうなんでもござれ、マハさんにすべてお任せします。(笑)

俵屋宗達は国宝指定3点、《風神雷神図屛風》は知らない人も居ないほどの超有名作です。なのに「生没年不明」という謎の多い人物です。町絵師としては異例の「法橋」の位を与えられ、皇室からの作画依頼も受けたほどの絵師でありながら、光琳が私淑するまでは注目されず、その後も明治まで低い評価に甘んじていました。故に時代での資料があまり残されておらず、研究もされていませんでした。そのことが、マハさんに思い切り過ぎるほどの創意・発想の場を与えました。「史実が判らないなら何書いてもへっちゃらじゃい!」とかでしょうか。通信美大授業で《風神雷神図屏風》レポートを書いたことがありますが、遣欧使節やカラヴァッジョとの接触など、ツユほども結び付きませんでした。

 個人的には『たゆたえども沈まず』は不満でしたし失敗作と感じています。宗達と異なりゴッホは、美術史的知識の薄い方々にも幾つかのエピソードが知られるほどの有名人気画家です。それがマハ的飛躍発想を阻害したのでしょう。そのストレスはこちらで、倍々にして発散されました。ただ、坂本龍馬が司馬遼太郎の創作人物と知らずに「史実」と信じてしまっている人も多い、ので、「宗達も」とならないか少し心配。そりゃ無いか…。

2023年6月 2日 (金)

最近読んだ本『文鳥・~』『親王殿下~』『線は僕を~』

『文鳥・夢十夜』夏目漱石 新潮文庫 1976年(2021年92刷)20230423_114058  

 

何だったのか? 他の本だったのか、引用だかナンだか、『夢十夜』に関する繋がりがあって買ったのですが、何だったのか忘れました。🥹 たぶん昔の本(おそらく講談社文庫)が本棚の奥にでもあると思うのですが新たに買いました。今の本の方が字が大きくて読み易いので。老眼対策。 

以前に読んだのは確か高校生時代、中学終わりから漱石はよく読みました。『文鳥』は読んだ記憶が蘇る。『夢十夜』は忘れたのか元々読んでなかったのか、一向に思い当たらない。『思い出す事など』はそんな本を読んだ記憶はあるのだけれど、内容的には曖昧、ま、その他全般に曖昧な記憶しか残っていません。 

解説の三好行雄は「小品」とジャンル分けしています。確かにエッセイとは異なります。「創作された随筆」と言った感じなのでしょうか? 皮肉とユーモアの相混じった、クラシカルでモダンな、明治の近代人としての理性的な洒落の利いたまさに「小品」です。本格小説も読み返したくなります。 

 

『親王殿下のパティシエール 5』篠原悠希 ハルキ文庫 2021年Img00001

 

 ライト系ノベルはあまり読まないのですが唯一読み続けています。「ハルキ文庫」自体、これしか手にしていないように思います。自身元パティシエなのと、歴史・中国史に興味があるのと、その組み合わせで読み始めました。5巻まで来ましたが、すでに7巻も発売されています。ま、焦ることもないのですが。 

今回のメインテーマは「ピエス・モンテ作り」です。要は菓子細工ですね。自身の体験からは「面倒・大変」とのイメージしかありません。見るのはイイけれど作りたくはありません。製作過程描写、具体的に判るだけに思い浮かべて寧ろ憂鬱になります。(笑) 

乾隆帝登場、永璘に絵を禁じた謎に少し近付きました。次号で明らかにされるのか? 本屋に6巻在庫はありませんでした。積読本も溜まっているので次巻はもう少し先延ばしにします。 

 

『線は、僕を描く』砥上裕將 講談社文庫 2021年20230526_100923395

 

 作者は水墨画家でもあるそうです。交通事故で突然に両親を失った青年が、ひょんなことから水墨画に出会い、人生を再生して行くというお話し。基本、「本屋大賞」や「漫画化・映画化」との宣伝のある作品は避けてしまいます。読者に阿ったエンタメ系の匂いを感じてしまうからです。 

今回この本を手に取ったのは、通信美大授業で日中の水墨画歴史を学んだこと、またFacebookお友達に水墨画家のいらっしゃること、が切っ掛けでした。因みにこのお方、ちらっと観た作品に興味を憶えてお友達申請したのですが、現代水墨画協会の理事というお偉い方でした。(*_*; お会いしたことのない方にお友達申請することは滅多にありません。貴重な出会いです。その後展覧会にお邪魔してご挨拶させて頂きました。 

小説は、面白くもあったのですが、やはり感動はしませんでした。孤独な青年が偶然に水墨画大家に出会い、気に入られてその才能が目覚める、という安易なストーリー、そして水墨画の世界も一般的興味の対象として「期待を裏切らない」描き方に感じました。作り物小説としては面白い部分もありますが、真に迫る感慨は感じられません。 

ただしかし、先日地元展示会で感じた疑問に答えるヒントは頂いた気がします。情感を込めようとして失敗している「センスの無い絵」と「上手に描かれた絵」、前者には描く前提に「感動」があり、後者にはそれが「無かったのかも知れない」ということです。 

美しい夕陽を見て感動して描こうとする、やたらと「赤」を塗りたくり勝ち。感動を感動として表現するには冷静な構成力も必要となります。しかし絵を描く動機として、端緒に「感情・感動」のあることは必要条件でもあります。無ければ単なる手先の運動にも成りかねません。 

水彩画の淡彩など、感想として「上手」しか出てこない、上手いけどナンカ面白くない作品、って、その「感情・感動」無しで描き始めてしまったのかも知れません。「上手に描こう」との意識が優先してしまっているのかも? またそういった作品、「上手に描ける題材」を選んで描いている、それでいつも同じような作品が仕上がる、と言う傾向もあるように感じます。 

技術・技巧に凝る方は、得てしてその方面への追及に夢中になって、視野の狭くなる傾向もあるかも知れません。感情・感動と「より良い・新しい作品を描こう」との意識があって初めて「アート」は成り立つのだと、技術・技巧はそのより深い表現のために必要となる「道具」なのだと、当たり前のことに気付かせて頂いた、そんな小説でもありました。

2023年2月17日 (金)

49年振りの金沢ー①

1泊2日での金沢旅行2月15日、足利市駅に車を置いて東武線で伊勢崎まで、JRに乗り換えて高崎から新幹線です。「はくたか」北陸新幹線は初体験。金沢駅到着は1時半頃、荷物も少ないのでそのままバスで「金沢21世紀美術館」へ。バスは、京都と異なりスイカ使えるのは1部バス会社のみです。
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入館券は学生割引で1,000円(シニアだと1,100円)でした。一般知名度の低いイヴ・クラインですので、空いていると思ったのですが意外と混んでいました。平日ですし事前予約の必要なほどではありませんが、土日は危ないかも? ただ、券売所で「クラインって人名?」とか聞いている人も。私の観測では、クラインが何者なのか知って観に来ている人は少数にも思えます。観光コース、ということでの観光客が多いのでしょうか? 謎です。
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館内は1部(半分弱)撮影可ですが、やや説明が判り難い。「何番と何番は~」と説明されるのですが、外表示だけなので自身が何番ルームに居るのか判りません。個々作品に×マークが無いので撮ってしまったら注意されました。撮影可の部屋には、入口外にOKマークが付いていました。しかし最初の部屋は(撮影不可なので)マーク無し。マーク付き部屋がスタートなら気付いたのに…。順路も迷路のようで判り辛かった。見逃した場所があるのかどうか判らなくて右往左往しました。
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金沢美術工芸大学卒展」も開催中でした。さすがに工芸の街、工芸系は特にレベルが高いように思えました。日本画も。
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外に出ると雪は更に激しくなっていました。傘にパラパラと音を立てる、アスファルト道路に跳ね飛ぶ乾燥した雪です。予報でスノーブーツ履いてきたのは大正解でした。その安心もあってバスで来た道を雪の中、金沢城の脇を抜け、ホテルまで歩いてしまいました。道を知るわけでなく(地図は持ってましたが雪に煙り方向はよく判りません)、1時間以上かかりましたが、疲れよりも風情が勝りました。
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ネットで「のどぐろ」売りの店を調べていたのですが、電話してみたら「満席」でした。ホテル近くのおばんざい小料理屋で、石川産の「天狗舞」飲みながら夕食。カウンター小料理屋の似合う街です。ひとり二次会はガンダム趣味のNHバーで。
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2022年12月19日 (月)

ワールドカップサッカー2022カタール大会


カタールW杯2022 が終わりました。4度の優勝を誇るイタリアが居ない、振り返ってみれば開会前から混迷の予想された大会でした。日本の番狂わせ勝利&グループリーグ1位通過、モロッコの躍進、クロアチアvsモロッコという、世界中継する米大手放送局が悲嘆する決勝戦可能性もありました。しかし終わってみれば、アルゼンチンvsフランスという、優勝経験国同士による組み合わせ。そして波乱の幕開けを象徴した、初戦にサウジアラビアに屈したアルゼンチンが36年振りの優勝を果たしました。誰か脚本家が居たかのような展開でした。サッカーも「筋書きのあるドラマ」だったのか?

W杯史上に残るであろう印象的・劇的な決勝戦でした。先制のメッシ弾、エムバベの連続弾で追い付き、延長戦での加点で決定と思われた後半にフランスが追い付きPK戦に。波乱の幕開けから優勝候補同士の決勝戦、そして引退?も予想されるW杯5回目の英雄メッシが得点を挙げての、待望の優勝。個人成績ではマラドーナを超えていたメッシが、唯一得られなかった勲章を獲得しました。そして決勝戦ハットトリックのエムバベ、スター系譜は受け継がれます。ホント、出来すぎ!
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印象に残っているのは1986年準々決勝のブラジル・フランス戦、1点を争う接戦の末のPK戦、将軍・プラティ二が外したものの際どく勝利、「ワールドカップ史上最も美しい試合」と呼ばれました。今回の決勝戦はそれに並ぶ名勝負だったと思います。当時は日本がW杯に出られるなどとは想像もできませんでした。出たのは大空翼とか。ベッケンバウアーやジーコと競いました。

朝寝してなんだか判らない内に夜になりました。楽しませて頂いた寝不足の日々でした。日本も「番狂わせ」「大健闘」も終わりにする、守っての一瞬のチャンスを待つのではなく、正面からぶつかっての、強豪国との対等な戦いを目指す位置に来つつあるのだと思います。4年後はアメリカ・カナダ・メキシコ共同開催、参加国も増えます。世界ランクも上がるでしょうし、次回はシードでのグループリーグになるはずです。「下剋上を許さない」戦いが必要となります。早くも4年後が待ち遠しい。
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2022年7月29日 (金)

久し振りの映画館

絵や授業で忙しくなっていましたので、長らく映画館に行っていませんでした。今年観たのはたぶん、「ドライブ・マイ・カー」だけ。因みにDVDやネットで映画・ドラマを観ることはありません。観たのは韓流時代だけかな。

久し振りの映画館、『キングダム2 遥かなる大地へ』観てきました。漫画の方は長過ぎて少々飽きが来ています。中華統一までにこっちの寿命が尽きてしまいそう。( ´艸`)
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ヒット漫画の映画化は失敗確率が高いのですが、前作はかなり良く出来ていたと思っています。パートⅡでは更に失敗確率は高くなると思うのですが、意外や、パートⅠを上回るほどに良かった!

漫画を読んでいるとないとでは感じ方も異なるのだろう。羌瘣が蚩尤戦を語る場面では、語り始める前にうるうる来てしまった、が、マンガ読んでない家内はあの場面が退屈だったとか。
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しかし配役が凄いよね!漫画的な(漫画だけど)役柄にまともな俳優陣がずらっと並んでいる。ハチャメチャ過ぎて却って楽しんで演じられるのかも知れない。史実無視のというか、古過ぎて史実のはっきりしない部分が多いので脚色し甲斐があるのだろう。しかし真面目に考えれば全く酷いお話しだ。全く歴史物語では無い。しかしこんだけ外れると寧ろ爽快!頭空っぽにして楽しめました。
               

観なきゃ観ないでも済んでしまうものですが、観だすと連続するのが映画趣味、2日連続で映画館通い。もう盛りは過ぎたので、田舎の映画館平日9時10分の回で観客数4人、我が家率(家内と2人)50%。

『トップガン マーベリック』36年振り、でしたっけ? コロナで遅れもしたし。すんばらしく面白かった!前日に次いで「パートⅡは不出来」説を覆します。情感部分は前作が良かったですが、画像迫力は今作が凄いですね。CG全盛期ですが、実写じゃなくちゃできない部分もあることを証明しました。さすがトム・クルーズ。画像迫力は「キングダム」の5倍超えでした。ホント、拳握り締めてしまいます。
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最初と最後に登場したP51ーDムスタングは、それ使ったかどうかは知りませんが、トム・クルーズがプライベートで所有している機種でしたよね。バイクはKAWASAKIだし。ポルシェもあれが1番ポルシェらしいスタイルです。トムキャットも登場するしサービス満点ですね。
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2022年3月 4日 (金)

最近読んだ本『近代絵画史~』『ツバキ~』『陰陽師』

『近代絵画史(上) ロマン主義、印象派、ゴッホ』20220203_103410

『近代絵画史(下) 世紀末絵画、ピカソ、シュルレアリスム』

高階秀爾、中公新書、2017年増補版

  

『20世紀美術』に続いての高階秀爾、面白い、判り易い、ファンになりそう。知らなかったことを知り、知っていたつもりだったことを改めて知り、知っていたことを更に深く知る、そんな体験をさせてくれる本でした。

 

美術史の定義として「近代はいつから始まったか?」との命題はしばしば問われてきました。判り易い一般的な答えは「印象派から」です。果たしてそうなのか?高階秀爾は問いかけます。

 

印象派の画家たちは、新古典主義に不満を持ち新しい表現を求めました。しかし彼らの改革はあくまでも「描き方」「表現の仕方」「技法上の改革」ではなかったか?との疑問もあります。彼らは新古典主義を否定して新たな世界を築こうとしたのではない、継続の先の「発展」を目指したのでは?との考え方です。

 

「眼に見えるものしか描かない」とした「写実主義・自然主義」のクールベ、そして反対に「眼に見えるものも手に触れるものも信じない。見えないもの、ただ感じるものだけを信じる」とした、ギュスターブ・モロー、そしてモーリス・ドニは「絵画作品とは~、本質的に、ある一定の秩序のもとに集められた色彩によって覆われた平坦な表面である」との確認に辿り着きます。これって「当たり前」なんですが、その「当たり前」に辿り着くのって、なんか凄いことに見えました。ん~~ん、実に興味深い。

 

印象派は、目指したのではなく、結果論として改革者になった。目指して「革命家」になったのはクールベ、そして「ポスト印象派(後期印象派・新印象派)」のセザンヌ・ゴッホ・ゴーギャン、そしてスーラ。「ポスト印象派」は、印象派の継続・発展を目指したのではない、「反印象派」として、否定して新たな表現を目指した、そんな、新たな視野を与えて頂きました。もう1回読み直そう。

  

 

『ツバキ文具店』小川糸 幻冬舎文庫20220223_090858

 

 文具店兼「代書屋」というちょっと変わった職を継いだ「ポッポちゃん」こと鳩子の物語り。代書を依頼に訪れる顧客の依頼からその人生を垣間見せる手法です。少々無理のある設定も見受けられる。最後はほっこりさせて終わらせるが、安心感と共に都合良い作り物感も多少・・・。

 

『たそがれビール』以来2冊目、小説は初めてです。エッセイはあまり馴染まなかった、というか、普通過ぎて面白みがなかった気がしました。こちら小説は、悪くは無いしそこそこ楽しめました。それでも満足とまでは行きません。じっくりとした深みに欠ける、やっぱり”そこそこ”で終わってしまう。後半になるにつれ深みは出てくるのですが、何かいまひとつ足りない気がしているのです。何かは判りませんが。ひとつひとつは悪くないのに・・・。もう1冊チャレンジするか、微妙な作家さんです。

  

 

『陰陽師』夢枕獏 文春文庫20220304_141558

 

 1988年作品、文庫本は1991年2月、私の買ったのは2019年の第60刷、人気本ですね。短編集だけで14集出ています。他に長編、関連本、漫画、TVドラマ、映画、舞台化もされているらしい。漫画原作・ドラマ化される作品には、偏屈偏見があって避ける傾向があるのですが、通信美大での選択科目「京都の文芸」での課題図書のひとつでした。「読まされる」のは不本意な面もあるのですが、食わず嫌い脱却の契機にはなります。

 

特に感動、とかのある類ではありませんが、単純に面白い。積極的に選び読むことは今後もないでしょうが、たまの気分転換には良いかも。しかし、同様のテーマで100篇近くの短編を書く、似たような話の繰り返しにならないか心配してしまう。泉鏡花文学賞他受賞多数、紫綬褒章まで得ている作家ですので、そうはならなかったのでしょう。続編を買うかどうかはタイミング、運命に任せます。

2021年12月 7日 (火)

最近読んだ本『クロワッサン~』『漁港の~』『三国志~』

『クロワッサンとベレー帽』鹿島 茂 中公文庫Image_20211126_0001

 

フランス文学者・鹿島茂の本、フランス語の言葉の本来の意味・使われ方と日本でとのずれを書いた『ア・プロポ』と、パリ・フランスに想いを馳せたコラムから成ります。副題は『ふらんすモノ語り』、ちょっとした空き時間に1章ずつ読めます。ストーリーに嵌り込んで乗り過ごす危険が少ないので、電車内読書に良いかも。そんなぶつ切りの読み方をしたので、薄い本なのに9か月ほど持ち歩くことになりました。作者の”パリ愛”を感じる1冊。

 鹿島茂は元明治大学教授、2020年で退任したらしい。以前読んだ本(『クロワッサン~』と一緒に買った)が、19世紀パリの娼婦・娼館に関する本でした。華やかでロマンティックなパリに憧れるだけでなく、風俗・日常生活に根を持つ文化を紹介する本を書きます。大学での授業も、きっと面白いものだったのでしょうね。岸リューリのイラストもエスプリっぽい。

  

『漁港の肉子ちゃん』西加奈子 幻冬舎文庫20211127_163850

 

いつの間にか西加奈子も7冊目になりました。椎名林檎推薦とのことで読み始めた作家です。これまででは、共感できる・できないが半々です。「あおい」「さくら」「きいろいゾウ」は、悪くはないけれどイマイチ入り込めなかった。「こうふく あかの」「こうふく みどりの」は良かった、1番はやはり「サラバ!」かな? 

 今回の『漁港の~』は既読本とは別タイプでした。読んだ方の評判が良く、アニメ映画化もされています。へそ曲がりの私には、共に避けてしまいがちな傾向です。それでも今回は購入してみました。概略想像したような傾向の本でしたが、想像したほど悪くはない、しかしそれを超えての感動とか感慨はありません。

 どうも、「ほっこりしたイイ話を書こう」との下心が見える気がするのと、「都合良い解釈」とも感じてしまう自分が居ます。ゴッホの作品は好きですが実際に彼が身近に居たら面倒な存在、肉子ちゃんも、文章で読むには楽しいキャラクターですが、実際に居たら”ウザい”と感じてしまいそう。良い面は判っても、目の前に居る時間はストレスも感じるでしょう。創作と考えて突き放して考えれば良いのだけれど、そうばかりも考えられない面倒な自分です。そう言えば、これまで読んだ西加奈子作品はすべて小学館文庫でした。出版社傾向はやはりあります。

 

 『三国志名臣列伝 後漢篇』宮城谷昌光 文春文庫20211204_231609

 

久し振りの歴史もの、もっと久し振りの宮城谷昌光。「三国志」のわき役たちの物語りです。盧植はこれまで劉備の先生として僅かに顔を覗かせる程度だったし、朱儁はもっと印象が薄い。皇甫嵩も漢末期の名将として名が登場するが箇条書き的な履歴のみ、王允は董卓との絡みで短期間日の当たる場所に。孔融と荀彧は曹操周囲でそこそこ登場、何進は一時期表舞台で主役を張るが「肉屋の、」として良く書かれることが少ない。そんな7人にスポットを当てた短編集。確かに三国志には、個性溢れる脇役が多数登場する。

この中で、私の読んだ従来の作と大差無さそうな描かれ方をしたのが孔融、1番違ったのが何進、だった。外戚として分不相応な出世を遂げた肉屋のオヤジ、的な描かれ方が脳裏に残っている。宮城谷を信頼するなら見る目は大きく変わる。

宮城谷で読んでみたい本もあるのだけれど、順番待ちが多数ある。暫くは無理そう。

2021年10月 4日 (月)

大谷君の2021年シーズン終了、奇跡の二刀流。

本日で、大谷翔平君の2021年シーズンが終了しました。投手として23試合にすべて先発として登板、9勝2敗、156奪三振、防御率3.18。打者としては、155試合639打席、46本塁打、100打点、103得点、26盗塁、打率.257。そしてリーグ最多の20敬遠。惜しくも二桁10勝は逃しましたが、好投しながら降板後に逆転されたり、味方打線が打てなかったり、貧打と脆弱なダックアウト陣とで逃した勝利も1つ2つではない。実質的には10勝もクリアしていると思う。

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メジャー4年目、いったい誰がこの成績を予想したものだろう? 渡米時、メジャーでの二刀流に不安を抱いた人は多かったと思う。日ハムでの活躍を見ていた日本人でも、西武ファンの私でも(大谷のホームランは見ていますが、投球を見る機会はありませんでした)、期待しながらの「果たして?」との不安を抱いたのは当然でしたし、NPBの実力を評価しない米人野球フアン・関係者では否定的な見方がほとんどだったと思います。そしてその、「メジャーで通用する」との基準は、投手としてローテーション入りして勝ち投手となる、打者としても先発陣に定着する、程度の期待だったと思います。その期待には、手術で投手としてのブランク期間はあったにしても、昨年までの3年間でも十分に「通用した」と判断しても、反論は少なかったと思います。

そして今年、今シーズン、ここまでの活躍を期待した人は、贔屓目甘ちゃんの日本人ファンでも、想像のできないレベルだったと思っています。シーズン前にそう発言しても、冗談としか捉えられなかったでしょう。快挙とか奇跡とか言う前に、全く”漫画的”です。ストーリーとしては、アニメ(「キャプテン翼」の大空翼とか)かコメディ(石橋貴明出演の「メジャーリーグ」とか)でしか映像化できない、バカッ話としか思えません。しかしこれは現実でした。事実は小説より奇なり、快なり。投手としての野茂、打者としてのイチローに並ぶ快挙を、二刀流として達成してしまいました。松坂・松井はとうに超えています。

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オールスター後では、疲れもあったでしょうし、対戦チームでの対応も厳しくなり、トラウトやレンドン、アップトンの主力打者の故障者リスト入りと、大谷への警戒・敬遠も増大しました。終盤での笑顔の少なくなった大谷君は可哀相でした。しかしそれも、彼は来シーズンへの糧としてしまうに違いありません。打者戦力が揃い、リリーフ陣補強なれば、笑顔でポストシーズンを迎える大谷君を見る事もできると確信しています。お疲れ様でした。十分に楽しませて頂きました。暫くは、ゆっくりお休みを取ってください。

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2021年3月24日 (水)

最近読んだ本「ローマ人の~」「芸術新潮~」「乙嫁語り」

「ローマ人の物語 30巻」塩野七生 新潮文庫41nm1oyokl_sx341_bo1204203200_

 

 「コンスタンチノープルの陥落」で嵌った塩野七生、「ローマ人の物語」はようやく30巻、ここまで3年はかかっていると思う。元々遅読だし複数冊併読(現在は5冊)するのが常で焦る気持ちもなく、長編だと普通のペースです。しかし塩野氏、絶対にカエサルに恋してると思う。文庫本で6冊を費やしてますし、文章も熱い!その気持ちにこちらも惹き込まれます。複数の愛人を持ちながら、トラブル無しとのエピソードは「さすが!」でしたね。(笑)

61g69thnxdl 805003_1カエサルの部分は勿論面白かったのですが、それ以前も以後も面白く興味深い。30巻では”賢帝”としての名しか印象に無い、マルクス・アウレリアスの切実な悩み・苦労が描かれます。皇帝も大変です。そして”独裁者”として認識していた皇帝の現実、ローマの皇帝は独裁者には成り得なかった(成り辛かった)ことを知りました。全43巻、まだ先は長い。

Img_20210314_125158 通常は読み切った後に書かせて貰っているのですが今回は特別、文庫30巻が行方不明になっています。それが昨年10月で現在でも迷子中。諦めて再度購入しました。ブランク4ヶ月ですので30巻は初めから読み直しました。ほとんど最後近くまで読み切っていたのですね。31巻は、不明の30巻と同時に購入していました。さてまた頑張ろう。

 

 

 

「芸術新潮 3月号 唯美と奇想の王国 英国絵画史」新潮社51wf6hmghel_sx365_bo1204203200_

 

高いので滅多に買わない美術雑誌、現在開催中の「コンスタブル展」に向けて珍しく買いました。ターナー、コンスタブルは何故か昔から好きでした。2018年、SONPO美術館(当時は損保ジャパン日本興和美術館)での「ターナー展」にも出かけました。ラファエル前派にも興味を感じていましたし、昨年の「ピータ・ドイグ展」も良かった。イギリス美術は相性が良いのかも知れません。

 

14歳でロイヤルアカデミー入学を許され、史上最年少26歳で英国アカデミー正会員になった J・M・W・ターナー、一方52歳で正会員の遅咲き J・コンスタブル、画風・生き方も異なるライバルの2人です。1832年の有名なロイヤル・アカデミー展示の再現も楽しみ。

   

この2人に限らず、それ以前そしてラファエル前派、ビアズリー、ベーコン、フロイドから私の嫌いなバンクシーに至る英国美術が語られます。とても興味深い特集でした。

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「乙嫁語り 13巻」森 薫 ハルタコミックス51kcaxulzzl_sx350_bo1204203200_

 

 今回は漫画、漫画はあまり読まないのですが、現在3種だけ発行を待って単行本で買っています。週刊・月刊誌は買いません。買うとそれ程面白く感じない話も見てしまうし、見てしまうと続きも気になり、心ならずも範囲が広がってしまう。それがイヤで買いませんが、その分出逢い機会も少なくなります。「乙嫁語り」は本屋でたまたま手に取りました。面白いのですが発刊間隔がすご~~く長い。現地取材も行ったようですが、歴史文化風習風俗、取材に時間を取られる題材です。やむを得ないでしょうね。解説本も買って参考にしています。14巻、今年中に出るだろうか?

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「漫画も芸術」と言われます。全否定は勿論しませんが、芸術表現素材としては必ずしも有利な分野とも思えません。破天荒で自由な表現のできる一方で、現実をリアルに描くには制限もある表現方法だと思っています。ファンタジー系などはお得意。ファンタジーもホラーもミステリーも読まない私ですので、漫画機会の少ないのも当然かも。

2021年3月 8日 (月)

「野球少女」 韓国映画

地元シネコンで映画を観てきました。映画は必ず映画館で観ます。DVDではもう10年位は観ていませんし、TVでも、このあいだスターウォーズ何とかを観始めたものの、気が乗らずすぐ観るのを止めてしまいました。どうも自宅では集中できません。やはり非日常空間「映画しかない」時間・空間が必要なようです。

今年は1月に1本2月に3本の作品を観ています。いずれも高崎・宇都宮の名画座系での鑑賞です。シネコンは、ハリウッド大作や漫画原作・アイドル出演系ばかりで、私の観たい作品を滅多に上映してくれません。今回は珍しく韓国映画の上映があり行って来ました。昨年の「鬼滅の刃」以来の地元シネコンです。高速代がかからず助かります。

「野球少女」2019年韓国映画 監督:チェ・ユンテ

「梨泰院クラス」でブレイク、とありますが韓国ドラマは見ませんので主演のイ・ジュヨンは初見です。真っすぐで少し頑なな演技、これだけでは演技が上手いのかどうかは判断しかねます。でもこの作品に限っては悪くない。
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ストーリーも至って単純、成るように予想通りに展開して予想通りに終わります。素直で単純で、案外こんな奇をてらわない作りが好感を呼びちょっぴり泣かせたりもします。”秀作”には少し足りないながらも観て損は無し、退屈もしません。大きな感動も無いけど。

男性社会のプロ野球界に挑戦する、嘗て”天才野球少女”と呼ばれた高校野球部員、「女性」ということで立ち塞がる壁を突破できるか?実在の選手をモデルとしているそうです。日本でも片岡 安祐美らの例がありますが、実際に突破できたのは水原勇気くらいでしょう( ´艸`) 
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プロテスト・トライアウト窓口での拒否は男女差別に当たるかも知れませんが、作中でも語られる通り、通用できるかどうかは差別ではありません。男女には生理的体力的な差は明らかに存在します。女性の筋力で150kmを超える速球を投げるのは不可能でしょう。ただし速球を投げられなくても通用している男性投手も居ます。嘗て西武に在籍した牧田(現楽天)は平均球速128km(最速137km)で立派に通用しています。

「男らしい」「女っぽい」との語が「差別用語」と非難されることも出始めた昨今の日本、おかしな現象だと思っています。私自身、女性のようにおしゃれしたい変異種ですので、ジェンダー感覚では決して男尊女卑感高い保守派ではないと思っています。でもなんでも言葉だけ形だけ平等にしようとの作為は、もはや悪平等でしかないと思っています。性差を含む言葉狩りが進めば、文学も芸術も崩壊してしまいます。

今月では2作目の映画鑑賞、明日も高崎の映画館に出かけます。
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