最近読んだ本『紫色の~』『お菓子で~』『美麗島~』
バブル初期、当時「アイドル作家」とも言われて持て囃された時代の林真理子の作品です。今や日大理事長ですね。立場危うそうだけれド…。
主人公はスタイリスト、当時流行先端の職種に就く彼女が新宗教に興味を持つという、「時代だなぁ」という作品。今読むと古臭さを感じてしまいます。しかも宗教に嵌り掛けた原因が「教会で知り合った信者の男」という軽さ、林真理子らしい。オーム真理教での事件前の作品なのでこんな扱いもできたのでしょう。「久慈尊光教」というモデル丸判りの宗教団体名「おひかり」との言葉も出てくるし。クレーム付かなかったのだろうか?
本棚から取り出した本です。若かりし頃の家内が買ったらしい。子育てに忙しかった時期にこんな本を読んでいたのかと思うとちょっと笑ってしまう。書棚には林真理子の本が数冊あります。すべて家内本、私は多分初・林真理子。
『お菓子でたどるフランス史』池上俊一 岩波ジュニア新書 2013年(2021年第12刷)
著者は西洋中世・ルネサンス史を専門とする東京大学大学院教授、『パスタでたどるイタリア史』に続く著作です。宗教や政治、素材、時代を経てのお菓子の歴史を辿ります。命を繋ぐ「食」という意味からは、必ずしも必要とは限らない「余分なもの」としてお菓子。祭事や神事から嗜好食品へとの変遷して行くには、大航海時代での砂糖やカカオの導入、そして植民地プランテーションでの大量生産化が必要でした。香辛料並みの高価品だった砂糖は、悲惨な奴隷制の犠牲の下に一般化されたのです。その中でフランスは、政略結婚によるスペイン・イタリアからの文化移入としてグルメ大国を創り上げて行きました。テーマ毎の編集で時系列を遡る部分もありやや混乱する場面もありましたが、興味深く読むことができました。
商才無く10年前に店を閉めましたが、製菓学校卒の元パティシエです。新婚旅行ではフランスを2週間巡りました。最終章に登場する、ヌーヴェル・パティスリーを牽引した「ルノートル」、出店した西武デパートには通いましたし、ガストン・ルノートル氏来日での講習会にも参加しました。食を離れてから自宅で作ることは無く、すっかり忘れてしまいました。
書棚にはまだ専門書も何冊か残されています。開くことは全くありませんでした。1982年、5万円の本です。当時の大卒初任給が12~13万円の時代でした。
『美麗島プリズム気候』乃南アサ 新潮文庫 2022年(2020年集英社)
小説を主として読んでいるのですが、時としてほんわかと、旅紀行とかエッセイとかも読みたくなります。そんな時のために買って置いた本です。台湾は行ったことないけど惹かれる部分もある国です。
そんな気持ち・期待からは少し離れた内容でした。初めて読む作家です。お気楽な旅紀行文ではなく、台湾の歴史に食い込んだかなり真面目な考察を提供しています。「日本兵として戦った本省人と、日本兵を敵として戦った外省人」の同居する国、歴史的には確かにそうなのですが、意識したことがありませんでした。親日国として知られる台湾の、新たな一面も垣間見ることができました。期待とは異なりほっこりとはなりませんでしたが、読み応えのある作品ではあります。
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