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2020年7月10日 (金)

最近読んだ本

「こうふくあかの」西加奈子 小学館文庫41gfdcpynl_sx348_bo1204203200_

 

「~みどりの」で2冊同時に書かれていた、とのあとがきを読み、読まないわけにはいかなくなった1冊。双方に同内容のあとがきが載っています。西原理恵子との別内容の続き対談と共に。

最近読んだ中では最も引きこまれた作品になりました。「サラバ!」より更に。「~みどりの」も良かったけれど1部「サラバ!」の2番煎じ的感じもあって・・・。実際には「~みどりの」の方が先で、その中の1部を焼き直して「サラバ!」の中に組み込んだわけではありますが。

「~あかの」は、2007~08年の話と2039年の話が並行して語られます。全く別種の、交わりそうにない物語が。先を急がせる気持ちに持って行かれる、そんな感情移入は久し振りな気がします。人と人、全く別の道を歩む人生が何処かで交わり交差する、少し前に読んだ「独立記念日(原田マハ)」もそのようなテーマでの作品でしたが、片や日常的な普通の生活の中での多数の交わりを描き、もう一方はある2つのドラマチックな生き様を描く、発想の一部に似たようなヒントはあったのかも知れませんが、出来上がった作品は全くの別物でした。

小説は作り物、極端に言えば”嘘”です。作者の好きなようにどうにでもなります。だからこそ、都合の良過ぎる展開は抑える合理的自制が求められる世界だと考えています。ファンタジー系はあまり読みませんし、泣かせる・感動させようとの作者の誘導の見え過ぎる作品も好みません。しかし今回は、2つの物語の”都合の良い”交差を内心望んでいる自身を発見してしまいました。

 

 

「娘の中の娘」源氏鶏太 講談社文庫Ebookjapan_b00162087590

 

家内蔵書です。文庫本として昭和55年第4刷、書かれたのは昭和33年とのこと、解説(武蔵野次郎)には「20年前の作品であるが、読者に少しも古めかしさを与えない~」とありますが、60数年を経た現在ではさすがに古めかしい。解説内容も当代の人気大物作家に遜った陳腐なものを感じます。

当時ドラマ化・映画化された作品も多い作家ですが、内容は当時流行ったホームドラマそのもの、理想化された型通りの物語です。正直で素直、正義感に溢れる主人公と、女性を暗がりに誘い出し迫ろうとする悪漢、そしてタイミングよく助けに現れる白馬の王子(笑)。晩年にご本人が心配した通り、後世に残る作風ではありません。直木賞受賞の「英語屋さん」に興味は残りますが、それは残念ながら家内書棚には無く、わざわざ買って来てまでは読まないかも。

「古めかしさ」、古いものすべてに当て嵌まるわけではありません。源氏鶏太の生年は1912年、太宰治1909年、檀一雄1912年、遠藤周作1923年、吉行淳之介1923年、もちろん時代風景は変わります。馬車が自動車に、ガス灯が電灯にLEDに、電話もダイヤルからプッシュホンそしてスマホに。使う道具や風景は変わっても、太宰や遠藤には「古めかしさ」を超えた表現があります。

さて現代に立ち返り考えてみます。当時次々にベストセラーを生み出した源氏鶏太、現代でのドラマ化・映画化される人気作家、この先の行方、将来での評価はどう変わるのでしょう?

 

 

「親王殿下のパティシエール」篠原悠希 ハルキ文庫511hbnk6zul_sx342_bo1204203200_

 

”パティシエール”の文字が目に留まりました。この文字無しでは興味をそそらなかったと思います。私、製菓学校卒の元パティシエです。

清皇族の厨房、助手として活躍する仏華ハーフのマリー、その人物設定は楽しげです。都合の良いあり得ない偶然機会と都合の良い展開、およそ作り物で韓国ドラマ的ですが、韓国ドラマに登場する不合理なイジメや出来過ぎのすれ違い等はありません。正直、韓国ドラマは苦手です。

西洋菓子を作るには設備も材料も乏しい清厨房、その中で仏菓子を作ろうと奮闘・工夫する主人公、一般の方にはどのように映るのか判りませんが、私なら忽ち白旗を挙げてしまいます。

何か自身の生き方考え方に影響を与える、糧として本を求めていますが、硬い難しい本ばかりじゃやっぱり疲れます。時には毒にも薬にもならない気楽な本も求めてしまいます。特に、泥沼的な痛い本を併読している時には。ひと時を楽しく過ごさせて頂きました。パート2も出ているとか。(韓国ドラマ的?)ロマンスを匂わす部分もあり、買わざるを得ないでしょう。願わくば、韓流ドラマのように、長々と続くことのないように・・・。

 

「いちまいの絵 生きているうちに見るべき名画」原田マハ 集英社新書Zerothree_oh4087208885cd

 

最初見かけた時「いまいちの絵」と題名を読み違えて興味を持った本。(笑) 読み違えなかったら・・・それでも結局は買ったろうなー。

原田マハさんお薦めの世界の26作品に関して書かれています。絵画評論というより、エッセイ的な、その作品との出会いや想いが書かれています。同じ作品でも出逢う時期や出会い方によっても感じ方は異なるでしょうね。その絵の描かれた時の作者の状況や、時代時代での価値観や画家の存在の在り方等、簡単な美術史的なものも判りやすく盛り込められています。「モネのあしあと」「ゴッホのあしあと」同様、入門書としてはよくできた本です。DIC川村記念美術館でのマーク・ロスコは是非観て頂きたいですね。折角日本にあるのですから。

2020年6月17日 (水)

最近読んだ本

「ことり」小川洋子 朝日文庫9784022648037

 

初めての作家です。他の作品購入目的で書店に寄った時、”芸術選奨文部科学大臣賞受賞作品”との帯を見て興味を抱き買いました。受賞に相応しい作品だと思います。知らなかったのですが、1991年に芥川賞も受賞しています。

主人公の死のシーンから始まり過去に遡ります。少し困惑させる序盤、暖かくも不思議さのある中盤、はらはらさせる終盤からプロローグ場面に立ち返ります。人の言葉を話さない兄、その兄と兄弟2人だけの閉鎖的だけれど落ち着いた日々、ただ一人残された主人公の孤独ながら不思議な平穏さのある日常、寂しくも暖かい物語です。原田マハと同い年ながら対照的な作風です。もう1作、芥川賞受賞作でも読んでみましょうか。

 

「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」村上春樹 新潮文庫10100151

 

読み始めた本は最後まで読み切ることを主義としています。そんな私が唯一途中断念したのが村上春樹でした。いつまでもトラウマ持っていても仕方ないので、リベンジ準備として読み始めました。旅エッセイだし、若い頃行ったスコットランド(目的地はズレますが)なので印象変えるには良いかと思って。結果、やっぱりリベンジは少し先になりそうです。エッセイは作者の人間性が出ますが、「性格悪いんだろうな・・・」が印象。上層意識・自己自慢の「違いが判る男」演出がウザイ。陽子夫人が撮られたという写真は素敵でした。

 

「モネのあしあと」原田マハ 幻冬舎新書9784344984448  

 

とてもわかり易く、難しいことを考えずに読めました。本格的な芸術論・美術史本ではありません。原田マハの芸術シリーズ本を読むには良いガイド本になりそうです。モネやゴッホ、印象派の画家たちへの親しみと愛を感じます。美術史的に解明するのではなく、画家の製作や暮らしに寄り添う、ホッコリ感の残る1冊です。

2020年6月 7日 (日)

最近読んだ本

「白村江」荒山徹 PHP研究所9784569831046

 

単行本は滅多に買わないのですが、「マイナー本で文庫は出ないかもしれない?」との不安から珍しく買っていました。買った切り暫く放置していたら文庫本が出ました。(笑) 荒山徹は3冊目、「高麗秘帖」も文庫本が出ていた。韓国ものしか読んでいないのでマイナー作家かと勝手に思っていたのですが、柳生十兵衛なども書いている売れっ子だったみたい。知りませんでした。(笑)

”白村江の戦い”は、旧日本帝国が”不敗神話”作りに秘していた敗戦、それをどう描いたのか興味がありました。エンタメ系演出は想定外でした。やはり無理があるように思いますし、渤海国までに繋げるのは、高木彬光の義経・成吉思汗こじつけ詭弁を思い出します。他著作を見ると元々そういったエンタメ作家だったよう。「サラン 故郷忘じたく候」で本格時代作家と勝手に誤解していたようです。ま、作り物エンタメ時代劇としては面白く読みました。歴史小説ではありません。

 

「ある結婚」源氏鶏太 角川文庫41dgiczmw9l_sx373_bo1204203200_

 

「月光のドミナ」に続く家内蔵書です。昭和55年の文庫本初版。当時のベストセラー作家でドラマ化された作品も多かったと記憶していますが、読んだことがありませんでした。晩年ご本人が「後世私の作品は読み継がれるのだろうか?」との不安を口にしていたとも聞きますが、PC変換で名が出て決ません。「源治啓太」とかになっちゃいます。人気作家として時代に寄り添い時代を映した、それ故に時代を超えられなかった部分もあるのでしょう。「ある結婚」他7編を収録した短編集ですが、時代臭の濃い、現代人には理解し難い部分のある作品なのかもしれません。その時代を生きた私には「ああ、そんな時代だったなぁ~」との感慨もあるのですが。ただ、検索してみると「御身」「英語屋さん」「家庭の事情」など最近出版された作品もありますし、電子書籍も多数出ているようです。すべてが淘汰されてしまったわけでもなさそうです。家内本の中にあるようでしたら、淘汰を免れた作品も読んで違いを読み取ってみたいと思っています。

 

「独立記念日」原田マハ PHP文芸文庫51pwthv2kkl_sx352_bo1204203200_

 

表紙がゴッホの「花咲くアーモンドの木の枝」、日本に憧れたゴッホ、桜を感じていたのでしょうか?

原田マハの誕生日が7月14日(「パリ祭」との名称は日本だけのものだとか)とは知っていましたので、誕生日に纏わるエッセイとかだと思っていました。買った時には。考えてみれば「独立記念日」は一般にはアメリカ合衆国、フランスの場合は「革命記念日」ですね。もっともフランスでは「ル・カトルズ・ジュイェ(7月14日)」と呼ぶのが一般的だそうです。

内容は連続する24編の短編、短編中にちょっとだけ登場する人物(女性)が次の作品の主人公となって物語を引き継ぎます。それぞれの物語に関連性はありません。主人公の生活も環境・生い立ちも異なります。

私の好きな風景に”赤城山南麓道路から見る前橋市の夜景”があります。山に囲まれたすそ野に広がる灯りの群れ、その小さなひとつひとつにそれぞれ生活があり人生がある。結婚式を翌日に控えて幸せの絶頂に、もしくはマリッジブルーに、新しい生命の芽生えもあるだろうし、にっちもさっちも行かず死を覚悟する絶望の中に悩む人だって居るかも知れません。もちろん、昨日と変わらぬ平凡な日常を過ごす人々も。その集合体である灯りが、私には何も語りかけず、その人生のひとつにさえ何ら関係することも覗くことも叶わない、そう考えると寂しくなる、私にとってはそんな風景です。

話が飛びましたが、原田マハの作品がそんな意図の短編集だと知った時に、その夜景を思い出したのです。興味深い設定ですしそれなりの成果はあるかも知れません。しかし前橋市の夜景には、私的には、感慨は遠く及びません。あまりに細かく多くの破片(短編)を紡ぎ過ぎたのかも知れません。個々の物語が使い捨て的にむなしく思えます。話数を半分ほどにしてより感情移入した短編にする必要があったように・・・。ただ最後の物語に複数の主人公が登場して会する場面にはほっこりしました。安心感というか、そうなって欲しかったというか、ま、都合良いご都合展開でもあるのですがね。

2020年5月25日 (月)

最近読んだ本

「月光のドミナ」遠藤周作 新潮文庫 2000000183217

 

本棚にあった家内昔購入の本、私も少しは読んだけれど、遠藤周作本は家内の買ったものの方が幾分多いようです。昭和55年11刷とあります。最近の大きくなった印刷字に慣れているとやや読み難い。文体も「ああ、昔はこんなのが普通だったなぁ~」という思い。最近は明るく鮮やかで軽快な文体が多いようです。改めて気付きます。その意味ではたまには若いころの作品を読み返すのは良いかも。”読み返す”ではなく、家内蔵書の中には読んだことのない本も多いし。暫くはこの手の「引っ張り出し」もやってみよう。

11篇の短編が収められています。短編集表題となっている「月光のドミナ」は性的マイノリティを扱った作品、マイノリティが日陰の身でなくなりつつある現代ではテーマに成り辛いかも。他作品も、内在する鬱屈を主題とするものが多い。戦後の「生き残ってしまった劣等感」のようなものも感じさせる時代背景は、すでに失われた感覚かも知れません。最近は刹那的な「面白さ」を重視する楽しくて読み易い本が多いので、こういった作品は益々読まれなくなるのでしょうね。読書がエンタメに走り過ぎるのはあんまりよい傾向ではないと思うのですが・・・。私もどんどん古い世代の人間になって行くのでしょう。

 

「現代美術史」山本浩貴 中公新書9784121025623  

 

美術系新書は久し振り。たまには真面目に勉強しましょう。それにしても知らない作家、潮流がどんどん出てきて付いて行けません。いちいち理解して読み進めようとすると大変なので、今回はある程度読み飛ばして概略だけ辿ることにしました。作者自身も「おわりに」で「本書の目的は現代美術の「正史」を編むことではありません」と書いてありますので、少し安心しました。しかし現代美術の発端ともなった歴史的な作品、デュシャンの「泉」が1917年の作品だったこと、改めて気付かされました。そんな昔だったのですね! 100年以上以前だぁ!

初めて聞く用語も多く、そのいちいちに詳しい解説の付かない部分もあり、判らないことだらけ。それでも読んで良かった本ではあります。「ハイレッド・センター」の語源、以前聞いたことはありましたが忘れていました。今度は忘れないと思います。それだけでも収穫かな?(笑)

 

「フィンセント・ファン・ゴッホの思い出」ヨー・ファン・ゴッホ=ボンゲル 東京書房Boox_bk4487813247

 

ゴッホの弟テオの奥さんヨハンナ(ヨー)の書いたゴッホ伝です。ゴッホの同時代人であり、直接に接した身近な人物の書いた一時資料として貴重なものだと思います。ただゲイフォード氏の解説にもある通り、その読み取りには注意を要する部分もあるとの理由も理解できます。つまりこの書の書かれた目的はゴッホの人物像を描く、文学的美術的意義ではなかったということ。ヨーの目的は、ゴッホの画家としての価値を高め世に送り出すことであり、その目的のために編集されたゴッホ像であるということです。ゴッホの飲酒癖には全く触れられていません。また、身近な人間であったにしても、ヨーがゴッホ本人に接したのは3回限りで短時間だったそうです。ただ半面、残された膨大な量の手紙を整理し世に残したのは当のヨーです。つまりゴッホの手紙をすべて読んでいるわけです。その意味では、ゴッホの内面に関しては、誰よりも詳しかったかも知れません。

本の内容に関しては、目新しい要素はあまりありません。一般に知られたゴッホ像そのままです。それは当たり前で、一般に流布されているゴッホ像の原点はこの書なのです。ゴッホの研究家も小説家も、すべからく読んでいるはずの資料です。小説ではありませんので盛り上がる面白味はありませんが、ゴッホファンなら1度は目を通しておくべき本かも知れません。

 

「こうふくのみどりの」西加奈子 小学館文庫9784094086034

 

「さくら」と「きいろいゾウ」でどうしようかな?と迷った西加奈子追い、「サラバ!」で継続が決定して4作目はこれになりました。女系辰巳家の三代とその周囲の人たちの人間模様、「サラバ!」とやや重なる部分もあります。祖母と母の屈曲してきた生き様は種明かしの如く徐々に浮かび上がります。その子であり孫である緑は、その詳細を知るわけではありませんが、間違いなくその空気を継いでいます。かなり際どい生き様を描きながら、最後は日常に埋め込む手法は鮮やかというか、ま、こうやられたら致し方ないと納得させられました。藍ちゃんと棟田さんを含め、「幸せになれたらイイナ」と何となく、最後は穏やかな気持ちになれました。これは「こうふくのあかの」も読まないわけにはいかないじゃないか。商売上手め!

2020年5月 1日 (金)

最近読んだ本

「パリわずらい 江戸わずらい」浅田次郎 集英社文庫9784087440485

 

何かエッセイが読みたくて、また最近フランス(&フランス語)に興味を持つようになり”パリ”に反応して買いました。パリの話はそんなに多くない。

浅田次郎の小説は読んだことがありません。時代小説、史実を基にした歴史小説は読むけれど、架空の創作時代劇は読まない。三国志は読むけれど南総里見八犬伝は読まない、とか、ですので。本作はそこそこ面白く、作者の人柄は魅力的です。「何か読んでもイイかな?」と思わせる。でも余程の切っ掛けでもないとやっぱり読まないと思う。

 

「退屈なベッド」落合恵子 文春文庫Bookoffonline_0012392775

 

本棚の家内の蔵書から。”レモンちゃん”ですね。栃木県出身。本棚は区別されてませんので、たまに2冊同じ本があることもあるけれど、基本好みの作家が異なります。高校生時代「セイ!ヤング」で聴いていましたが、本を読むのは初めて。家内と重なるのは遠藤周作とか水上勉とか。

8編の短編集です。”自立した女性像”的な作品が多いのでもっと昔の作品かと思いました。1992年の作。それでも28年前です。今読むと少し古さを感じます。無理して屹立してる感じも。まだ女性の自立が確立していない(現在でも確立しているのか?は判りませんが)時代、「頑張らないと」感が抜けない時代なのですね。

 

「インザ・ミソスープ」村上 龍 幻冬舎文庫87728633

 

久々の村上龍です。「限りなく透明なブルー」で結構感動した覚えがあるのですが、その後は「トパーズ」を読んだくらい。(「69」も読んだような気もするのですがよく憶えていない)

感性が年取ったせいなのか理解不能。「ミソスープ」が何を意味するのかも判らない。ただ、人間は残虐シーンが好きなのか?刺激が好きなのか?のめり込む部分があることを自覚しました。因みに私、映画やアトラクションでの刹那的な刺激は嫌いです。

 

最近のもう1冊、「たゆたえども沈まず」は別途単独で書いてしまいました。浅田次郎部分での「架空の創作時代劇は読まない」ですが、時代劇に限らず、都合よく作り過ぎた創作・作り話は嫌いです。ですのでファンタジー系はほとんど読みません。もちろん創作世界ですので、ほとんどが嘘・作り話なのですが、合理的・必然的に組み立てられていなければならない、嘘っぱちだだからこそ、好き勝手気儘に書いてはいけない、との信条があります。その差は微妙で、たぶんその時その時の私の感情の在り処でも振り幅は異なってしまうのだと思います。現在その境界線近くに存在するのが原田マハです。ですのでいつもハラハラドキドキ読んでます。「ジヴェルニーの食卓」で嵌ったのですが、これは全くOK、面白かった。「暗幕のゲルニカ」は微妙で部分際どい所もあるけれど何とかセーフかな?というところです。そして「たゆたえども沈まず」はアウト!の判定です。でもはらはらさせられる分新鮮で、まだ暫くはマハ作品読み続けると思います。ある日突然、嫌いになっちゃうこともあるかも?

 

面白そうな本買いました。「フィンセント・ファン・ゴッホの思い出」、ゴッホの弟テオの奥さんが書いた本です。テオの所有していたゴッホの作品はすべて奥さんのヨハンナが相続しました。当時は価値あると思われていなかったので、親族もOKしたのでしょう。テオの死後、ヨハンナが回顧展を開催、ゴッホ認知に努めました。「価値無き物」として散逸・処分されてしまっていた可能性すらあったのですから。現在4冊併読してますので、どれか読み終わったら読み始めようと思っています。

2020年4月27日 (月)

「たゆたえども沈まず」

「たゆたえども沈まず」原田マハ 幻冬舎文庫51ng7lncgil_sx329_bo1204203200_ 

 

基本単行本は買いませんので、文庫化を2年半待って読みました。中学生で油彩を始めて最初に憧れたフィンセント・ファン・ゴッホ、期待感大きく読み始めたのは事実です。期待が大き過ぎたのでしょう。予想以上に失望感を感じてしまっています。待望の原田マハ作品、読み辛かったとかつまらなかったとかではありません。スムーズに読み進み読み終えました。しかし後には粗筋が残るのみ、肌に染む感慨や情感は残りませんでした。

これまで読んだ原田マハ作品すべてに満足したわけではありません。都合よく組み合わされた偶然に、技巧的不自然さを感じたり、逸脱し過ぎたフィクション増幅にハラハラさせられたり、元々が私の好んだ作家たちと彼女の作品とは、趣旨の異なる創作でした。それでも創り出されるマハ世界に浸り、実像とは異なるだろう画家像に感情移入させられてきました。しかし今回は、読後に生きた画家像がこころ内に描き出されることはありませんでした。

先に読んだ「ゴッホのあしあと(幻冬舎新書)」によって、小説でのフィクション部分に関しては知識を得ていました。それは理解の助けになりました。しかし作者の「彼の人生がドラマ以上にドラマチック、強烈過ぎてつくりこめない。創作の中に落とし込むのは難しい画家」との危惧がそのまま反映されてしまったように感じています。「ジヴェルニーの食卓」でのモネ、「暗幕のゲルニカ」でのピカソ、そして「楽園のカンヴァス」でのルソーのようには、人間ファン・ゴッホは私の脳内には描き出されませんでした。

作者の常套手段として、画家そのものの1人称ではなく、他の人の目を通しての画家像が描かれてきました。モネの義娘ブランシュであったり、ピカソのモデルである写真家ドラ・マールであったり、ドガの画家仲間メアリー・カサットであったりしました。セザンヌを描いた「タンギー爺さん」に至ってはタンギー氏の娘を語り部に、肝心のセザンヌは1度たりとも登場しません。そしてそれは成功してきたように思えます。今回の語り部は架空の日本人加納重吉です。しかし重吉が語るメインはゴッホ本人ではなく弟のテオドルスですので、肝心のゴッホ本人の描写は遠くなります。更にテオに関しても”親しい友人”の枠を超えず、これまでの関係性に比べると移入度が薄く感じられます。その遠さが、皮下に触れられない、薄皮1枚隔てた煩わしさを感じさせます。

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個人的には、描くに「難しい画家」との危惧を抱きながらも従来の手法を選んだ選択ミス、消極性での限界でもあったように考えています。難物ゴッホに対するには、なり振り捨てて飛び込み、泥塗れで1人称で描くような捨て身な積極性が必要ではなかったかと。エンタメ的に”面白く描こう”との作為のあり過ぎるのが、私的には原田マハの欠点と考えています。せめて「太陽の棘」の時くらいには、裸で飛び込んで欲しかった。作家原田マハの器用さが、今回はその限界を示したように感じています。

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設定に関しても不満点が2点。自殺説での疑問点になっていた銃の出処、やはり無理があります。あれでは単なる”ふと思いついたアイデア”の枠を超えません。実際には接点のなかったと思われる林忠正との創作部分でも、ゴッホの才能を認めながら1点も買わなかったのはやはり不自然でしかありません。出会わなかった事実通りに、林忠正のパリでの活動とゴッホ・テオの行動を別個並行に描き、1歩遅れた出逢いすれ違いで終えた方が納得できたかも知れません。

好評の感想を多く目にしますので、私の期待が過剰だったのかも知れませんが、私には新味の少ない、従来のゴッホ像・テオ像が繰り返されたようにしか映りませんでした。この作品で初めてゴッホの画家像を知った方々はまた別の感慨を持ったのでしょう。しかしそれなら、昔の映画でカーク・ダグラスの演じたゴッホの方が、私には身に沁みました。

ここ暫く、ゴッホの作品を目にする機会が多かったですね。国立西洋美術館での「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」でも観られるはずなのですが、コロナ渦で公開が延期となっています。前売り券購入済みなのですが、難しそうです。

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2020年4月10日 (金)

最近読んだ本

「日の名残り」カズオ・イシグロ 土屋政雄訳 ハヤカワ文庫 9784151200038

 

ブッカー賞受賞作。「浮世の画家」は文体に不自然さを感じて(訳のせいもあるかも?)馴染みませんでした。こちらもやはり僅かな違和感はありますが、他の翻訳本との大きな違いはありません。日本生まれの作家ながらまるっきりの英国作家という感じ。(私感ではあります)

読みながら、主人公の思考に思い違い的な違和感や空気読めない感、頑で幅の狭い判断力、等、人格としての欠落部分が垣間見えます。「こんなんでいいのかな~?」と不安を抱えつつ読み進みましたが、それこそが本書の主題だったのですね。序盤でそうとは気付かせ難く、中盤で「もしや?」と思わせる、うまい具合に乗せられました。沈みゆく大英帝国の残影をひとりの執事に託して描いた秀作です。本当の(英国の)その姿は想像の内ですが、英国人にも評価されたのですからその通りなのでしょう。外国人としての外からの目が、寧ろ的確に描けたのかもしれませんね。

 

 

「逆軍の旗」藤沢周平 文春文庫 9784167900328

 

4作の短編が収められています。「逆軍の旗」は明智光秀を主人公にしています。天下を狙ったわけではなく、憤ったわけでもなく、そこに”行き着いて仕舞った”ひとりの人間としての光秀を描いています。藤沢周辺の筆はリアルで、本当にそうだったのかも?と思わせます。

あとがきに「ありもしないことを書き綴っていると、たまに本当にあったことを書きたくなる」とあります。他の3篇を含めそれぞれ、事実を基にした小説ではあるのでしょうが、あたかもノンフィクションでもあるような雰囲気を漂わせます。自身「都合よく作られたエンタメ物語は苦手」ですので、(勝手な思い込みかも知れませんが)そういったイメージのある時代劇作家・藤沢周平作品は読んだことがありません。その意味ではたまたまかも知れませんが、私に合った藤沢作品だったようです。「上意改まる」「二人の失踪人」は有名な話ではなく本当に淡々と事実を書き綴ったような雰囲気ですし、「幻にあらず」も上杉鷹山を描いたのですが、私自身に鷹山に対する知識が無く素直に受け取れました。

 

 

「始皇帝ー中国帝国の開祖」安能 務 文春文庫9784167913854

 

安能務作品は久し振りです。初めて読んだのが「封神演義」、漫画の流行っていた頃です。私は漫画の方が後でしたが。あちこちの三国志を漁っていた時代に「三国演義」も読みましたね。こちらを読んで最初の印象は「あれっ?こんな文体の作家だったかなぁ?」でした。もっと歴史小説的作風に感じていました。随分前に読んだきりですので当てにはなりません。要するに歴史小説的な重々しさは薄く、やや現代小説的滑らかさがあるということです。読み易いですが読み応えも軽くなります。ま、問題はありません。漫画「キングダム」所以で手に取って購入してしまったわけですが、始皇帝・政イメージは少し「キングダム」に近いかも知れません。従来の冷酷な暴君イメージは薄くなります。焚書坑儒に関しても新しい理解となっています。これが今の定説なのかどうかは判りませんが、歴史教科書も私の時代とは異なる部分も多いようで、うかうかできません。

 

 

「サラバ!」西加奈子 小学館文庫9784094064421

 

椎名林檎さん推薦とのことで読み始めた西加奈子、3作目。「きいろいゾウ」は捉え処がいまひとつ判らず?のまま。「さくら」は幸せな日常から一転の残酷な設定、どのような救いを見出せるのか暗鬱に読み進んだ割には、すっきりした結末は見出せず。多少の救いにはなるにしろ、1頭の犬に負わせるには重過ぎました。3作目で初めて充実した読後を味わえました。林檎さん絡みでなかったなら、行き着く前に放り出していたかと。今からなら前2作にも違った感想が浮かんだのかも。

イラン・テヘランで生まれた主人公、作者の経歴と重なります。猟奇的な姉とひたすら存在感を消して周囲の顔色を窺う弟。若年・青年時の主人公は太宰の「人間失格」にも部分重なる。青年後期から主人公は性格に歪みを生じ、姉に責任転嫁して社会に背を向けます。そこから再生の道はあるのか?文庫本3巻の長さを無駄に使っていません。どのエピソードも欠かせません。特にカイロでの少年期が良いですね。直木賞受賞に相応しい1作です。4作目も読みそうです。(というか購入済み)

 

 

「旅屋おかえり」原田マハ 集英社文庫9784087452259

 

いまだ止まぬマハマイブーム、元々直木賞系エンタメ分野にはやや偏見もあり、あり得ぬ偶然を重ねる都合の良い話には警戒感を持つタチです。切っ掛けが絵画趣味絡みでの導入とはいえ、ここまで嵌るとは思いませんでした。絵画系以外では「フーテンのマハ」「カフーを待ちわびて」「キネマの神様」に続く4作目。都合のよさには相変わらず危うさを感じてはいますが、ここまではなんとか許せる範囲、というかマハマジックで許容範囲が広がってしまっているのかも? 「フーテンのマハ」を読んでいるので、このお話にも違和感少なく入り込めたのでしょう。読んだからどうだという物語でもなく、私の人生には何の印も残さないでしょうが、ひとまずほっこりさせて頂ける時間でした。

次作は「たゆたえども沈まず」を買ってあります。ゴッホテーマですので楽しみにしていたのですが、原則文庫本しか買いませんので出版を待っていました。画家物は今後も読み続けると思います。それ以外はどうなるか微妙。

 

 

「クアトロ・ラガッツィ」若桑みどり 集英社文庫9784087462746

 

何かの書評だと思ったのですが、「天正少年使節に関してはこの本が~」とのお薦めを見て買ってしまいました。通常他人の推薦は当てにしないことにしています。好み・考え方はひとそれぞれ、そして私の読書個性はマイナー傾向と承知している故に。内容に関しての説明や概略が書かれている場合には参考にはします。単に「お薦め」だけでは(その方の考え方が判りませんので)参考にならない、という意味です。それが今回はついうっかり、でした。そして今までの方針の正しかったことを再認識しました。

「読み始めた本は最後まで読む」を基本方針としています。今までに途中断念した本は1冊のみ。今回も無理して頑張りました。文庫本1.000ページ余を耐えるのは辛かった・・・。全く面白くありません。”小説”かと思って買ってしまったのですが、学術文献のような作品でした。これが新書版でしたらそれも納得なのですが、ドラマ原案にもなったとの帯もあり、すっかり騙されてしまいました。解説にも「信頼できる資料のみにしたがい、想像や空理を排除して、」とありました。私の勝手な誤解ということではありますが、それなら何故新書として学術書らしい出版形式を取らなかったのか理解に苦しみます。

学術的歴史書としても、決して出来が良いとは思えません。歴史新書本も読まないわけではありません。何しろテーマが絞られていません。天正少年使節が全くのメインテーマというほどでもなく、ポルトガルやスペインの世界制覇政策やイエズス会・フランシスコ会の布教方針の違いや争い、そして明智光秀本能寺の黒幕探しまで。あまりに範囲を広げ過ぎ、一般読者にはどうでもよいような微細な資料までも細かに提示する。これだけ膨大な資料を調べ上げるのはさぞかし大変だったとは思いますが、「調べた資料はすべて開示しなきゃソン」的に節操がありません。テーマを絞り簡潔整理して、3/1~4/1程度のページ数で新書本にまとめ上げるべき内容だと思います。一般読者向けに出版するにはね。

2020年3月 6日 (金)

最近読んだ本

「天空の城 竹田城最後の城主赤松広英」奈波はるか 集英社文庫

9784087458459 雲海に浮かぶ城としてインスタ映え的に有名になった但馬・竹田城、その最後の城主となった赤松広英の生涯を書いた物語。観光話題に乗じた安易な小説との疑いも頭を掠めましたが、しっかりと下調べしたもののようです。”安易な”ものではありませんでしたが、歴史小説としての重厚さは感じられませんでした。女性作家ということもあるでしょうし、それも代表作がコバルト文庫という作家さんですから致し方ないですね。NHK大河的な「世に平安をもたらすために戦った」という綺麗ごとでの”悲劇の城主”的描き方ですので、良くできた物語ですが、それ以上ではありません。

 

「デトロイト美術館の奇跡」原田マハ 新潮文庫9784101259635

文庫本で120ページという薄い1冊です。ちょっと嫌な予感がしたので前回目についた時には買わなかった作品、たまたま目ぼしいマハ作品がなか ったので買ってしまいました。自動車産業不況で破綻に瀕したデトロイト市は、再生のために市の財産処分案を模索。その中でデトロイト美術館所蔵作品の売却話が持ち上がります。富豪ロバート・タナヒルの寄贈作品をメインとする美術館所蔵品には、印象派作品を始めとする名品が揃っています。その危機を救ったのは・・・。という奇跡の物語なのですが、その奇跡の中身が原田マハらしくないのです。実際に起こった出来事ですので実現は確かに奇跡ではあるのですが、クラウドファンディングというのは誰でも思い付きそうな対応です。予想を裏切らない原田マハ、というのも初めてです。美術館ファンの黒人老夫婦とかも登場させて物語に深みを持たせようと努力はしているのですが、やはり冴えがありません。

Img_20161215_104153 現実に起こった”奇跡”の「事実は小説より奇なり」とマハさん自体が気押されてしまったのか、もっと意地悪く考えればバンセン?番組じゃないから美術テンセン?でしょうか。巻末の鈴木京香との対談が更にその疑いを濃厚にしています。2016年上野の森美術館での展覧会は私も観ました。画集のオマケに付いた小説なら秀逸ですが、独立した作品として読まされるのはちょっと・・・。

 

「ゴッホのあしあと 日本に憧れ続けた画家の生涯」原田マハ 幻冬舎新書9784344985032

小説「たゆたえども沈まず」を書くに至った経緯や取材での旅を通して、ゴッホの生涯を追った伝記であり解説であり作者のエッセイでもあるのでしょう。私もゴッホは好きで中学時代に憧れ伝記物語も読みました。昨年の「ゴッホ展」も楽しみました。作者のゴッホに対する想いには共感する部分も多く見つけられます。一方の林忠正に関してはやはり全く知識がありません。「たゆたえども沈まず」でのフィクション部分に関する記述もあります。読後の方が良かったのか?との思いもありますが、読んでしまったのだから仕方ない。読後の方が理解がし易い部分もあるだろうし、結果論ですね。読みたい気持ちは更に募りましたが、文庫版になるまで待ちます。

「ラファエル前派の軌跡」展図録

Img003_20200306164801 昨年の三菱一号館美術館での展示会の際の図録です。展示の時は画集としてさらっと流し読みしただけですが、今回はきっちり読みました。「ラファエル前派」という括りはいまひとつ掴み難いところがあります。ジョン・エヴァレット・ミレイとエドワード・バーン・ジョーンズとが同じ括りの中にあるのが不思議だし、時代の”アヴァンギャルド”だったという部分もあまりぴんと来ません。それでもロセッティの描く女性は艶っぽい! 同じくターナーの影響を受けながら、一方はラファエル前派に、もう一方は印象派に、という流れになるのも興味深いですね。

2019年12月29日 (日)

最近読んだ本③

「最後の秘境 東京藝大」二宮敦人 新潮文庫

副題は「天才たちのカオスな日常」 61ja3uepxml 作者は一橋大経済学部卒だけれど、奥さんが東京藝大彫刻家卒で、奥さん在学中に書いた本だそうです。家族でフランス旅行、サモトラケのニケの前で5時間動かなくなったという奥さん、私も美術好きで魅せられてしまうことはありますが、せいぜいが30分ですね。5時間は考えられない。そんな“天才たち”を探るネタ本です。「芸術家は変わり者」という世間一般イメージ通りのエピソード、更に超えてしまうびっくりネタ、一般的な就職は全体の1割にも届かず「行方不明」卒業生が半数近くを占めるそうです。そんな読者の期待に応える話題が続くのですが、読み終わってみると意外にも「真面目に美術・音楽探求に勤しむ」学生たちの真摯な姿が脳裏に残ります。好奇心ネタに終わらなかったのは作者のアートに挑む若者たちへの愛なのでしょうか?

 高校1年の頃は私も藝大を目指すつもりでいました。当時の絵画科倍率は50倍超、今は10数倍だそうです。因みに「ニケ」は戦いの神、英語読みだと「ナイキ」ですね。

 

「スペイン岬の秘密」エラリー・クイーン 越前敏弥・国弘喜美代訳 角川文庫

 少し前に読んだクイーンの短編集が不満足だったので読んだ国シリーズ長編。休暇を楽しむつもりで出かけたクイーンが思いがけずに殺人事件81gcrninvrl に巻き込まれます。2時間ドラマでよくある設定です。それはイイとして、やや盛り上がりに欠ける、十分には引き込まれない中途半端感が漂います。「何故裸で?」がメイン謎ですが、その要因作りに少し無理があるように感じました。推理ものだけにネタバレ危険で詳しく説明はできないのですが・・・。「X」「Y」「Z」が素晴らしかったので読んでみたクイーンシリーズですが、今回も欲求不満です。クイーン作品の中では特に人気のある作品でもないようです。今度は人気作の方を読んでみましょう。巻末解説では、国別シリーズ人気順位(クイーンFCで)ではエジプト・ギリシャ・オランダが上位、これらはドルリーン・レーンシリーズと年代が一致します。この辺りが乗っていた時期なのかも知れません。

 

「ゴッホ展」図録 

Img001_20191229225201 小説ではないのですが完読しました。10/112020/01/13、上野の森美術館で開催中の「ゴッホ展」の図録(カタログ)です。いつもは写真だけ見て文章はところどころ拾い読みするだけでしたが、読み始めたら面白く、挨拶文から巻末の年譜まで完読してしまいました。中学生時代から好きだったゴッホ、知ったつもりで知らなかった部分も多々ありました。伯父が大手画廊の経営に携わっていてそこに勤めたこと、画家を志した初期にはアカデミーで学んだこと、そして画歴が10年ばかりとは知っていましたが、印象派を知り今に知られる画風になったのは4年ほどでしかなかったこと。また、今回出展されている「薔薇」は「白い薔薇」として知られていますが、本来は補色対比の実践で描かれた鮮やかな作品だったこと。(退色して白くなった) 「コートールド展」やゴッホ関連の映画2作品と合わせて、ゴッホを再認識することができました。

 

「ピエール・ボナール展」図録

 ゴッホ展図録が面白かったので、本棚にあったボナール展(2018/09/2612/17国立新美術館)図録も読んでみました。ところがこっちは苦労しまImg008_20191229225201 した。難しい。今まで拾い読みしかしていなかったので、書き手・編集によってこれほどまでに違いがあるとは思っていませんでした。解説部分は難しい専門用語(しかも外国語)も多く、理解できない部分が多かった。それでも、1部とはいえ理解できたところもあるわけで、読んで無駄にはなっていないと思います。完読までいかなくとも、図録も写真だけではなく、ちゃんと読むべきと改めて思いました。図録も高いですしね。

2019年12月28日 (土)

最近読んだ本②

よもやの原田作品3連発です。マハ熱が覚めません。

 「楽園のカンヴァス」原田マハ 新潮文庫

 2012年の作、「ティム・ブラウン!何処かで聞いた名!」()、噂は聞いていたけれど、どの作品に登場したのか知りませんでした。アンリ・ルソー、あまり知識のない画家でした。ピカソとルソーとの関係、司馬遼太郎ではないですが同じくキャラクター作りの上手い作家ですので、どこまでが本当かは判りませんが、ありそうな、そして素敵な間柄ですね。2000年の“今”から1983年と19061910年のパリを行き来する、「暗幕のゲルニカ」と似た設定です。架空のルソー作品と青青の時代のピカソ大作と、あり得そうなミステリーです。アイデア、目の付け所がさすが原田マハです。創作話と知りつつ引き込まれてしまいました。有能なキュレイターから紆余曲折を経て美術館監視員を務める主人公の今を含め、人の生き様への関心の深さを感じさせる作家です。9784101259611

 

 

「異邦人(いりびと)」原田マハ PHP文芸文庫

9784569768168 6回京都本大賞受賞作品。マハ作品としては初めての架空作家主人公作品です。銀座の画廊の二代目篁一輝と資産家の娘で私設美術館の副館長である妻菜穂とを主人公に、複雑な生い立ちを経る若き女性日本画家を絡めての物語、端書に“著者新境地”とあります。2015年作品です。 

小説としては実に面白い、ただ個人的拘りとして私には「創作に過ぎる」ことを嫌う部分があります。現実にはあり得ないストーリーを作れる、それは小説の魅力であると共に危険部分でもあると思っています。つまり「なんでも有り」の行き過ぎを嫌うのです。ですのでファンタジー系や漫画原作映画等が苦手です。ハリウッドアクション大作映画も。映画だけでなく小説でも、話を「都合よく作り過ぎる」作品、一時の娯楽・刺激だけの作品には嫌悪感さえ感じる場合もあります。人生・生き様というと大袈裟になりますが、自身の内面の今後に何らかの影響を与える、栄養になってくれる作品を求めています。過去自身の生き方に、大きな影響を与えた作品も実際にありました。

 その意味で、韓国ドラマ的な血縁絡みは、やっぱり引っかかります。「暗幕のゲルニカ」のテロ巻き込まれやピカソ隠し子はギリギリセーフとしても、こちらはかなりアウトに近い感覚です。

 

「リーチ先生」原田マハ 集英社文庫

 英国人陶芸家、バーナード・リーチを描いた作品です。W杯終了間もなく読みだしたので、「ええと、リーチ、リーチ、リーチ・マイケルじゃなくて・・・」とか()、名前が出なかったりしました。9784087458855

 1954年を序章として、1909年に遡り、更にその3年前を回顧する形で話は始まります。濱田庄司・柳宗悦・河井寛次郎・志賀直哉・武者小路実篤等実在の陶芸家・作家に混じって、架空の人物・沖亀乃介を語り部として、その視線を通して芸術家群像の青年期とその成長を描きます。後の大家の青春群像は瑞々しく内心に響きます。プロローグとエピローグを亀乃介の息子高市に語らせるあたりは、哀愁的な技巧の上手を感じさせます。阿刀田高の文庫本解説にはやはり「現実らしいフィクション」に躊躇を呈した疑問が書かれています。「あり」との結論には私も同感です。入念な取材とスケールとで、フィクションの危うさを支えています。それこそがマハワールドなのでしょう。2016年作品。今年文庫化されました。

 

原田マハ、珍しく待機在庫なし状態になっています。芸術家シリーズは取り合えず読んだかな?まだ何かあるのだろうか?原点に戻って、次は「カフーを待ちわびて」辺りかなと思っています。ただ、マハ以外の待機本は何冊もある・・・。

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